第1部 G大久保発電所 駒ヶ根市  天竜川本流せき止め建設 天竜川本流の電源開発は大久保発電所から始まった。南向村(現中川村)に計画した南向発電所の工事用電源に充てる第一水力との位置付けで、伊那峡に堰堤を築き、その下流に設けた水槽の中で水車を回した。大水量を使い、5.7メートルの低落差で発電するダム式発電所だった。 当時の技術を結集したのだろう。本流をせき止め、発電所を建設する大工事だったにもかかわらず、1926年11月の着工から、わずか10カ月で発電を始めている。 施工に関わった総合建設業ヤマウラが創業95年を記念して、駒ヶ根市の本社前にモニュメントを置いた。大久保発電所で1997年まで使われていた水車・発電機の現物だ。技術の伝承を誓い、地域にある自然エネルギーを多くの人たちに再認識してもらいたいとの願いを込めた。   発電所の放水口には二つのトンネル。水車を回した大量の水が、堤防の桜の枝をくぐるように本流に戻っていく。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)