〈43〉大久保発電所(駒ヶ根市東伊那)   天竜川本流での第1号 天竜川電力が、天竜川本流で最初に造った発電所。下流に計画された南向(みなかた)発電所(中川村葛島)の工事用電源を確保するため、一九二六(大正十五)年十一月から、二七(昭和二)年九月にかけ、わずか十カ月で完成させた。 発電所の落差は五・七メートルと低い。上流三百七十六メートルにある大久保ダムで天竜川をせき止め、多量の水の水圧を利用して発電。四台の水車が回転し、発電した千五百キロワットを上伊那地域の家庭や工場に送っている。 大久保発電所は、福沢諭吉の娘婿で、現在の中部電力や東邦ガスなどを設立した実業家・福沢桃介が手がけた。福沢は「日本の電力王」と呼ばれ、天竜川水系では、泰阜村の泰阜ダムなどの電源開発を行った。同発電所は現在、中部電力が管理している。 発電所のある駒ケ根市東伊那は「竜東」と呼ばれ、中央アルプスの山並みが一望でき、気候が穏やかな土地柄。発電に利用された流水が、陽光に反射してきらめいていた。(札木良)