<35>小黒発電所(伊那市伊那)  地域発展に大きく貢献 伊那谷に現存する一番古い水力発電所で、一九一三(大正二)年に完成。長野電灯が建設し、一五年に伊那電気軌道へ譲渡された。伊那電気鉄道に電力を供給するなど、上伊那地域の発展に大きく貢献。現在は中部電力が管理している。 建設当時は、小黒川上流約二キロの取水口から発電所の真上に見える水槽まで、木の樋(とい)で水を引いた。導水路の延長は千三百五十八メートル、落差は二百二十六メートルで、二百五十キロワットを発電していた。現在の発電量は、機械を取り換えて千百キロワットになった。 長野電灯より先に、「伊那電灯会社」が発電所を造る計画があったが、長野電灯への権利譲渡という形で協議は決着。しかし一三年夏、赤穂村(現・駒ヶ根市)で、村営の水力発電か長野電灯からの電力供給かをめぐる住民の対立が暴動に発展。「赤穂事件」と呼ばれ、当時の村長らが罪に問われた。 百年後の現在、各地で住民団体が小水力発電を目指して活動。原子力発電の是非が論議される中、電力会社に頼らない取り組みが広がっている。(札木良)