<27>遠山森林鉄道梨元貯木場(飯田市南信濃)  木材景気の記憶を今に 古くから「遠山郷」と呼ばれる山深い谷に、かつて遠山森林鉄道(通称・林鉄)が走っていた。国道152号沿いにある梨元貯木場跡には、地元有志が復元した機関車と貨車が展示され、林鉄がもたらした木材景気の記憶を今に伝える。 林鉄は一九四四(昭和十九)年十二月、梨元−大沢渡間十九.六キロが完成し、伐採された木材の輸送を開始した。五六(同三十一)年一月には、北又渡−西沢渡間一〇.九キロが開通。最盛期には貨車二百四十二台と数えた。 木材の伐採は民間企業五社が担当。各社は営林署に軌道使用料を払い、自社の機関車で木材を運んだ。林鉄は住民や南アルプスを目指す登山者の足としても活躍。地域に大きな経済効果を与えた。 しかし、伐採地が奥地に限られるようになったことなどから、採算が悪化。レールは七三(同四十八)年十月までにすべて撤去された。人々が夢を託した林鉄は、時代の流れに消えていった。(中山道雄)