第2部 G西天竜幹線水路流末の階段工 伊那市 小沢川へ水落とした流末の水路  階段工は「小沢のそろばん滝」とも呼んだらしい。水が止まって半世紀が過ぎ、底には草木が根を張っていた。  岡谷市川岸の天竜川で取水する西天竜幹線水路は、約25キロ運んできた水を伊那市の小沢川に落とす。その流末は1961年に西天竜発電所ができるまで、急斜面に造られた階段状の水路だった。  晩秋には水路清掃のために止水して、泥吐きをする。階段状になった堰(せき)と堰の間には水がたまり、ワカサギやウナギが自然に集まった。堰の下の方に二つずつある排水用の穴を棒で突いて泥を吐き出させると、魚が面白いようにとれたという。  「水が止まるのはいつも夜中の3時とか4時。あのときはウナギの腹が月明かりで光って見えるほどいた。後になって岡谷辺りでいけすが壊れたらしいと聞いて、そのせいだったのかと納得した」。近くに住む男性(76)が子どもの頃の思い出を懐かしそうに語った。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)