第1部 Oお志茂(しも)の水除(よ)け 中川村  あふれた水の直撃避ける 中川村田島の前沢川右岸。天竜川の合流点にも近い一帯の集落では、整然と積まれた石垣が目に付く。道路の両側の石積み、敷地を囲むように積み上げられた石は、上流から運ばれてきたものなのだろうか。前沢川ではかつて洪水や土石流が頻発し、下流右岸はたびたび被害に見舞われていた。「お志茂(しも)の水除(よ)け」はそんな場所に造られた。 「大百姓だった責任として、田んぼを守るために築いたと聞いている」と話すのは屋号「お志茂」の当主で神職の松村健悟さん(42)。船形の石積みは、屋敷というよりも、下流側に広がる「田島たんぼ」、とりわけ「外記島(げきじま)たんぼ」と呼ばれる水田を守るためで、せきを造って水を分け、前沢川からあふれた水の直撃を避けたという。 道路の拡幅や街路灯設置のために、石積みの一部に手が加えられてきたが、前沢川の方角に真っすぐ向いた船のへさきのような部分には、今も昔の面影が残っている。 (文・倉田高志、絵・片桐美登)=第1部おわり