<1>座光寺石川除(飯田市座光寺)  存在感ある石積み整然 天竜川を挟んで対岸にある伴野堤防(豊岡村神稲)から、跳ね返ってくる川の流れに悩まされ続けた江戸時代の座光寺村。被害の大きさに耐えかねた村民が建設資金を集め、一八三一(天保二)年に「座光寺石川除」が完成した。一八三五年には約七十六bに渡って石が崩れ、現在残っているのは一八六八(明治元)年に造られたものだ。 石川除の完成以来、新田が急速に開発された。現在は市道の道端に面しており、耕地の一角で城郭の石垣のように、隙間なく整然と敷き詰められている。保存状態は極めてよいといわれる。 車で現地に向かうと、どっしりとした存在感のある石積みが目の前に現れた。一つ一つの石に水害防止の願いを込め、作業に従事した当時の村民の姿に思いをはせた。 JR飯田線元善光寺駅から一`、徒歩十三分。松川ICから十五`、車で三十分。(札木良) 諏訪湖から遠州灘へと流れる天竜川。古くから「暴れ川」として有名で、流域の人々は激流と戦いながら、その営みを維持してきた。駒ヶ根市の国土交通省天竜川上流河川事務所は、上下伊那地域の治水施設や文化を「伊那谷遺産」として登録するプロジェクトを立ち上げた。現在、七十九件が取り上げられている。先人の苦労や知恵を伝える“遺産”を紹介する。