<42>三信鉄道(飯田市−愛知県新城市)  鉄道史に残る難工事 辰野町と愛知県豊橋市を結ぶJR飯田線(全長一九五・七キロ)。「三信鉄道」はこのうち、天竜峡(飯田市川路)− 三河川合(新城市川合)間六七キロ区間で一九三七年に全線開通した。 鉄道は天竜川と支流に浸食された険しい峡谷地帯を通るため、橋やトンネルが多数必要になる。資材輸送もままならず、工事は最初から困難が予想された。 現地測量では、北海道の鉄道建設で経験を積んだアイヌ民族の測量士・川村カネトが活躍。測量隊を率いて断崖絶壁を進み、難所に次ぐ難所を乗り越えた。 工事は二九年八月に始まったが、豪雨による土砂崩れやトンネルの落盤で何度も中断。日本の鉄道史に残る難工事の末、丸八年を費やして完成した。 秘境駅として有名な為栗駅(天龍村)近くの万古川橋梁に行ってみた。崖っぷちの小道を約十分。橋の前後はトンネルで、天竜川沿いに切り立った山々が迫る。無名の人たちが命がけで造った鉄路を、列車が風をついて走り抜けた。(中山道雄)