<31>遠山の霜月祭り(飯田市上村・南信濃)  神々の舞に酔いしれる 遠山の霜月祭りは、南アルプスを望む「遠山郷」に伝わる湯立神楽。清和天皇の貞観年中(八五九〜八六七年)に宮廷で行われていた祭事を模した湯立が、ほぼ原型のまま伝承されていると言われる。一九七九年に国重要無形民俗文化財の指定を受けた。 祭りは毎年十二月にあり、今年は計九神社で行われた。大鍋の周りで神事や舞が続き、終盤には面を着けた舞手が登場。煮えたぎる湯を素手で払う「湯切り」で人々の魂を洗い清めた。 面は水の王、火の王、天伯などさまざま。戦国時代から江戸時代にかけて、遠山郷一帯を治めた遠山氏の死霊とされる面や、稲荷(いなり)、猿も現れて舞い続けた。南信濃和田の諏訪神社の祭りには二百人近い観光客が集まり、神々の舞に酔いしれた。 険しい山に囲まれた遠山郷の自然は厳しい。人々は神と自然に対する畏敬の念を抱きながら、この祭りを受け継いできたのだろう。(中山道雄)