<21>千畳敷カール(駒ヶ根市・宮田村)  紅葉彩る中アの大自然 中央アルプス宝剣岳の直下に広がる千畳敷カール。駒ヶ岳ロープウエイの千畳敷駅(標高約二六一二メートル)に降り立つと、紅葉が彩る別世界が広がった。目の前にそびえる険しい岩山。「想像した以上。すごいね」。若い女性の声が弾んだ。 カールは、氷河に浸食されてできたわん状の「圏谷」を指すドイツ語。千畳敷は日本で唯一、山の麓から見えることで知られる。全国的にも希な地球活動の痕跡を体感できる場所として、伊那谷遺産に登録された。 しらび平と千畳敷を結ぶロープウエイは一九六七(昭和四十二)年に完成。それまで一部の登山者しか触れることができなかった中アの大自然が、一般の人にも身近な存在となった。二〇一〇年には乗車数一千万人を突破。韓国、台湾など海外から訪れる観光客、登山者も多い。 千畳敷から約一時間。きつい登り道を歩いてたどり着いた宝剣岳(二九三一メートル)の山頂から見下ろすと、千畳敷カールはまた別の表情を見せた。遠く広がる伊那谷の町並みが、太陽の光に輝いた。(中山道雄)