<2>入舟船着場(伊那市坂下)  街道の物資運んだ要所 江戸から明治時代にかけ天竜川の船着き場として利用された。中山道から伊那谷を南下して三河に向かう伊那街道、高遠から甲州街道に通じる金沢街道、権兵衛峠を経て木曽に通じる街道の分岐点という好立地。各街道から運ばれてきた大量の物資を入舟の地で船に積み替え、川に乗り出した。 明治に入ると、定期船がさかんになった。一八九三(明治二六)年には、入舟と別府・時又(どちらも飯田市)に発着場を開設。入舟〜時又間を下り五時間、上り三十時間を費やし、月十二回貨物を運搬した。定期船は一九〇六年五月末まで就航したが、その後は途絶えてしまった。 入舟船着場のあった場所は、国道153号と361号の交差点に位置し、現在でも交通の要所だ。車の窓から目をやると、弁財天宮の赤い鳥居がはっきりと見える。天竜川流域の商売繁盛を願う当時の人々の思いを今に伝えているかのようだ。(札木良)