<11>小渋橋(大鹿村大河原)  土石流しのぎ不変の姿 一九六一(昭和三十六)年夏、伊那谷地方に莫大な被害をもたらした「三六災害」で大鹿村の大西山(一七四一メートル)が大崩落した際、三連アーチの小渋橋は、土石流に耐え抜いて変わらぬ姿を見せた。 南アルプス赤石岳(三一二〇メートル)を源流とする小渋川。狭い渓谷から解放され、大鹿村大河原で青木川と合流する少し上流に架かる橋が小渋橋だ。 鉄筋コンクリートで長さ百六メートル、幅五.五メートル、支間は三四.四メートル。雄大な自然と調和し、その景観が村民たちに親しまれてきたとして、二〇一一年に国の登録有形文化財に登録された。以前は国道152号の橋だったが、現在は国道が下流の新橋に移り、村道橋として利用されている。 小渋橋から西側を眺めると、大西山崩壊地が見えた。四十二人の命を奪った土石流でも壊れなかった橋は、多くの村民を勇気づけた。大鹿小学校の児童たちは橋に花を飾り、手入れをしているという。橋を渡りながら、安らぎを感じた。(札木良)