第2部  H北の沢眼鏡橋 辰野町 国有形文化財の道路橋  遊歩道を下ると橋の存在が確認できた。辰野町の北の沢川の谷に架かる渡河橋(とかきょう)で、石とれんがで造られていた。地元では「めがね橋」と呼び、歴史的景観に寄与する近代遺産として2011年に国の登録有形文化財に登録された道路橋だ。  橋の下はまるでトンネルだった。上流側から中に入ると、両側下部の石積み橋台や、アーチ状に組まれた天井の赤れんがが印象的で、照明さえあれば洋風建造物の通路のような雰囲気だった。時折風が通り抜け、下流側から聞こえる落水の音が橋の内部に心地よく響いていた。  08年に住民有志らがめがね橋保存会をつくった。周辺の草刈りをし、遊歩道の手入れをして明治中期の遺産と景観を守っている。保存会長の岡田米造さん(77)は「天井のアーチを支えている赤れんがが、いったい何層積み上げてあるのか、実際のところ誰も知らないんです。そんな不思議さも魅力です」と話した。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)