第1部 K 諏訪形の猪垣 伊那市  野生動物から農作物守る 丸太でできた頑丈な柵は伊那市西春近諏訪形の農地の西端にあった。野生動物から農作物を守るために先人が西山のふもとに築いた猪垣(ししがき)の跡に、約10メートルを復元したのは1995年。地元の「西春近地域の環境をよくする会」などが2009年に改修延長し、現在は約40メートルある。 猪垣の山側にはマレットゴルフ場があった。ボランティアでコース整備をする浦野和夫さん(80)によると、コースが野生動物に荒らされることもしばしば。イノシシの仕業か、木の根を掘ったり、コース上のマットを裏返したりするという。 猪垣は、野生動物と耕作地の境をつくった。「梅畑が毎年イノシシに掘り返されていた。まるで重機で掘ったかのような穴ができた。ところが猪垣ができたらやられなくなった」と浦野さん。 復元された猪垣の里側には電気牧柵(ぼくさく)が整備された。一帯の農地は今、「平成の獣垣(ししがき)」で守られている。    (文・倉田高志、絵・片桐美登)