<4>伝兵衛五井(伊那市と辰野町)  水利事業に大きな功績 伊東伝兵衛が手掛けた五つの用水路を指す。伝兵衛は一八〇一(享和元)年に、現在の伊那市長谷杉島の旧家に生まれた。高遠藩主の信任を得て、水はけの悪い段丘上の水利事業に大きな功績を残した。 五井は、伊那市内の「お鷹岩井筋」「小原井筋」「大島二番井」「鞠が鼻井筋(伝兵衛井筋)」と辰野町の「上伊那井筋」。伝兵衛が書き残した図面が伊東家に残されている。 同市の三峰川扇状地左岸は、鞠が鼻井筋(伝兵衛井筋)や小原井筋などによって開発され、扇状地右岸は大島二番井などの開削で農地となった。その後も復旧や再建工事が進められ、多くの人々が水路の維持管理や改良に力を尽くした。 伊那市街地から高遠方面に向かう途中、道路脇の水路には、とうとうと水が流れていた。伝兵衛五井は現在でも、上伊那地域の田畑を潤し続けている。長い水路の開削に挑んだ伝兵衛の心意気と、その熱意に応えて作業に励んだ人々の姿を、そこに見た気がした。(札木良)