第2部 C夜泣き地蔵/出砂原(ださら)の大石 下伊那郡高森町  土石流で埋まった地域 下伊那郡高森町出砂原(ださら)の地蔵通りの入り口で、特産の柿を手のひらに載せた「柿地蔵」が来訪者を迎えていた。地図でたどれば「夜泣き地蔵」はこの近くだったが、道路からは全く見えなかった。地元の人に尋ねながら住宅の裏手に回ると、三角すいのような形をした大きな石があった。 石の上には大小2体の地蔵菩薩。「石の横を通ると赤ん坊の泣き声が聞こえ、お地蔵様を建てたら泣きやんだ」との言い伝えが「夜泣き地蔵」と呼ばれるゆえんだ。 小さい方の地蔵菩薩は風化が進んでいた。1715年の未(ひつじ)満水で濁流に飲まれた「出砂原六地蔵尊」の中の流されずに残った1体ではないかとの説もある。 見上げるほどの大石も未満水で上流から押し出されてきたものだという。「この辺りは大島川の土石流で埋まった地域。出砂原という地名の通りだ」と出砂原自治会役員の男性(65)が教えてくれた。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)