第1部 E大西山崩壊地 下伊那郡大鹿村  桜咲く「憩いの場所」に 大鹿村大河原の小渋川と青木川の合流点近くにある大西公園。桜咲く頃はこんもりとした山のように見える。背後の大西山が崩壊したのは1961年6月29日。三六災害だ。山は高さ450メートル、幅500メートルにわたって崩れ、水田が広がっていた島川原は大量の岩塊で埋まった。 公園は犠牲者の慰霊と村の復興を願って整備された。村産業建設課によると、67年ごろから崩壊地で緑化活動が始まった。桜も植えられたが、すぐには根付かなかったという。有志がさくらの会をつくったのが80年。植栽は続き、今では約3000本が花を咲かせている。 4月中旬、公園は「大鹿さくら祭り」でにぎわう。来訪者はざっと1万人。景気良く打ち鳴らされる太鼓の音は小渋川の対岸にまで響き渡る。「ここは憩いの場であり、村のシンボルですよ。災害のあったあの場所も掛け替えのない古里ですからね」と村役場の担当者が口にした。  (文・倉田高志、絵・片桐美登)