小渋川流域は、天竜川における直轄砂防事業発祥の地です。流域には美しい景観を見せる上蔵砂防堰堤をはじめ、昭和初期から建設された数々の砂防堰堤があります。
流域を中央構造線が縦断し、南アルプスの険しい地形と脆弱な地質のため、多くの大崩壊地や地すべり地が存在しています。渓床には、土砂が厚く堆積し、洪水時には下流に大量の土砂が流出する危険性を有する地域です。
昭和9年の室戸台風などの全国的な水害において、砂防事業が被害を最小限に防止したことが認識され、これを契機に昭和12年に直轄砂防事業に着手しました。
入谷地区は小渋川の支川鹿塩川、その小支塩川左岸に位置しており、地すべり区域は東西方向約1,200m、標高差約500m、面積は約138haに及びます。下流には大鹿村の中心である鹿塩の集落があります。
昭和36年の三六災では、各所で地盤沈下、地すべり性崩壊が発生し、移転を余儀なくされた人家もありました。近年においても、降雨や融雪出水、集中豪雨などにより、地すべり活動が活発化しており、被害が発生しています。
このため、昭和63年より直轄地すべり対策事業を行っています。

小渋川本川と支川青木川の合流部(大河原付近)