櫛田川(くしだがわ)のむかしばなし

櫛田川むかしばなし

昔々、伊勢の五ヶ所わんの西の岩屋いわやに、黄金おうごんにわとりつちを持つ鬼之丞という大男がいました。鬼之丞は松の根を売り歩いており、特に櫛田川くしだがわの岸にある中万ちゅうまの市では高い値で売れました。鬼之丞はそのうちに、市のにぎわいにまぎれて子供を食べるようになってしまいました。
中万ちゅうまの人はおびえましたが、鬼之丞が犯人はんにんだとわかると家もろとも焼きころしてしまい、やしたはい櫛田川くしだがわへ流してしまいました。
鬼之丞が持っていた黄金おうごんにわとりつちは川のどこかにあるとうわさされました。それから、この日をおにの祭りとし、祭りがむとみな裸足はだしになって櫛田川くしだがわに入り、無病息災むびょうそくさいねがうそうです。

「櫛田川」名前の由来

倭姫命やまとひめのみこと天照大神あまてらすおおみかみ鎮座地ちんざちを求めて諸国しょこく巡業じゅんぎょうの際、この地でくしを落とされたことからこの名がついたとされています。これにならい歴代の斎王さいおう群行ぐんこうの際、櫛をこの川に捨て神に仕える決心けっしんをしたといわれています。