まんなかビジョン
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議事要旨

第18回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨


日時 平成19年7月3日(火)15:00〜17:00
場所 メルパルク名古屋 2階 瑞雲(西)


◇本懇談会のとりまとめ結果(須田座長による総括)

今回の議論の中で得られた意見をまとめると、以下のようなまとめとなる。

1.まんなかビジョンの改訂について

改訂まんなかビジョンの今後のスケジュールについて

  • 平成19年度末頃に改訂ビジョンをとりまとめるスケジュールについて確認。

改訂まんなかビジョン骨子(案)修正について

  • 改訂まんなかビジョン骨子として、5つの政策的な目指すべき将来像と25の具体的な目標、当面実施する16の具体的なプロジェクトの括りについて確認。
  • 全般的に良くまとまっているとの意見が大勢。

[ビジョンをまとめる上での理念について]

  • ビジョンとして、100年後の将来ビジョンを念頭に置き、それを踏まえて、具体的な5年後、10年後のビジョンを導くようなまとめ方が良いのではないか。
  • 「自立」とは何かを検討する必要がある。財政的な自立のみが「自立」ではなく、住民が「生き甲斐」や「満足」できる、地域となることが「自立」ではないか。
  • そのためにも、「住民の社会参加の機会」を増やしていく事が重要であり、このような観点を追記する必要がある。
  • 時代的な流れは、効率性の観点から一極集中していく傾向にある。しかし、「選択と集中」の考え方の中でも、中部地方の特性である分担散型の地域構造が活かせる、社会資本整備のバランスが重要である。
  • 社会資本の長寿命化に向け、ライフサイクル論を含めた整備・維持更新を進めていく必要がある。

[政策体系の構成について]

  • ビジョンの随所に、国土交通省ならではのキャッチフレーズが必要ではないか。
  • 政策体系を構成する項目について、「まだ多いのではないか」、「重要な項目なのである程度の項目は必要ではないか」との双方の意見があった。優先順位やメリハリの示し方を検討する必要あり。
  • 「基本理念」の中で、「新たな課題」と「まだ解決できていない課題」が混同して取り扱われている点がある。
  • 「概ね10年の中部地方の戦略」の後に個別の施策を表現する方が分かりやすい。
  • 「水不足問題」、「食糧危機」、「エネルギー問題」、「人づくり」、「地域医療」について、一歩踏み込んだ記述が必要ではないか。
  • 「国土マインド」は、フレーズとして分かりやすい表現にをさらに工夫すべきではないか。
  • 第2東名・名神、中部国際空港の第2滑走路、リニア新幹線は、もっと具体的に記載すべきではないか。

[「住民・企業・行政の地域づくりの役割(一例)」について]

  • 国、地方の財政が深刻な状況にある中で、行政が細部にわたりサービスを提供することは限界がある。国、地方自治体、企業、住民それぞれのすべきことは何かを見直す必要がある。
    例えば、
    > 国は、国でしか出来ない大きな事だけを行う役割がある。
    > 地方自治体は、国との関わり方を整理し、地域戦略や政策を考え実行していく必要がある。
    > 住民や企業は、公益的な分野も担っていく必要がある。
  • 各主体の役割分担を明確にして、各々の垣根を越えた連携が必要であり、それをビジョンとして示すことが必要ではないか。

以上

◇各委員の発言
1.まんなかビジョンの改訂について
2)改訂まんなかビジョン骨子(案)修正について
@ビジョンをまとめる上での理念について
A政策体系の構成について

奥野委員

  • 「交流・連携」の具体的な目標の中にある「自立」とは何を意味するのかを議論していく必要がある。
  • 必ずしも財政的な自立だけが「自立」ではなく、高齢者も含め地域の住民が「生き甲斐」や「満足」ある生き方ができるかが重要である。
  • 地域において住民の「参加の機会」を設ける事が重要である。例えば、自治会に公益的な役割を付与し、地域住民の主体的な活動を行政が支援することも重要ではないか。
    「新しい公共空間」や「新たな公」という考え方があるが、様々な人が参加できる「参加の機会」を作り、住民の満足度を高めることが重要ではないか。

小笠原委員

  • 当ビジョンの位置付けを示す「はじめに」は、インパクトに欠ける。「まんなかで日本のリード役となる」ことを分かりやすいフレーズで伝える工夫が必要である。
  • 中部地方の課題は、「新たな課題」と「まだ解決できていない課題」が混同しているため、両者を整理すると分かりやすくなるのではないか。
  • 「概ね10年の中部地方の戦略」を示した上で、個別の政策が展開されていく示し方がより分かりやすい。
  • 「戦略」にある、「技術・知能・人・産業の集積」は、中部地方を一段と強化する大きなポイントであると思う。インフラ施策が交流や人材の誘致に結びつくということを強く意識したビジョンにすると分かりやすい。
  • 人材や知能を集めるには、医療、教育、生活インフラをいかに整備するかが重要であり、人が住みやすくなる具体的な施策を書き込む工夫が必要。

松浦委員

  • 中部地方の分散型の地域構造という利点が、財政難の中で経済合理性や効率性により「集中」を助長する懸念がある。
  • バランスある社会資本整備による分散型の地域構造を活かすことが、自己完結型の競争力のある地域を形成していくと思う。
  • 今後、エネルギー危機や資源不足への対応が、地域の自律性を高めるという面で重要になっていく。

松尾委員

  • まだ記載項目が多いと感じる。「選択と集中」の観点から、優先順位をつけても良いのではないか。
  • 最低でも100年を見据えたビジョンを最初に示し、そこから引き算的に10〜20年、当面5年の計画を作る事が重要。
  • 国土交通省ならではのビジョンとすべきである。例えば、「環境・景観」の「山・川・海の連続性再生プロジェクト」は国土交通省がリーダーシップを発揮できるプロジェクトの1つであろう。
  • 日本の社会資本整備は、戦後急速に進められてきたため、老朽化により今後同時的に再建が迫られるだろう。社会資本整備には、材料の調達、建設管理、取り壊しまでの一連のライフサイクル論を含めた計画が必要である。

水谷委員

  • 「まんなかで日本をリードする中部」という将来像は良いと思う。
  • 5本の政策の上に、10〜20年の目標、これから5年のプロジェクトという構成も良いと思う。
  • 記載項目は多く感じるが、いずれも重要な項目であるため、あえてやるべき事が多いことを示すべきではないか。
  • 中部地方が日本をリードするために必要な社会資本整備として、中部国際空港の第2滑走路、第2東名・名神、リニア新幹線の整備などを明確にビジョンに掲げるべきではないか。
  • また、エネルギー問題として、新たな原子力発電所の整備について一歩踏み込んだ記載ができないか。

中村委員

  • 日本は食糧自給率が40%であり、中部の豊富な農林漁業資源を活かすためにも、「産業競争力」では第三次産業のみでなく、第一次産業としてのモノづくりを考えるべきではないか。
  • 「メイドイン中部」が生産できる基盤が安定し、安全で豊かに暮らせるという点でも、「産業競争力」にある「水の安定確保」が重要な項目である。
  • 「暮らし」にある「国土マインド」という言葉は、一般国民にも分かりやすい表現に見直す必要がある。

桑田委員

  • 食糧問題は非常に重要で、先進国でも日本の自給率は最低の40%である。100年先には確実に訪れる食糧危機について、具体的な目標に掲げてはどうか。
  • 世界の中で日本の技術力が低下している。モノづくりの集積地として、「人づくり」の観点を取り上げるべきである。
  • 中山間地域について、山林・農地・医療の荒廃は深刻である。特に医療の確保については、陸と空の医療体制や地域連携医療を進めるなど、具体的な記載があると良い。
  • ビジョンへの具体的表現により、住民は「私たちのことを考えてくれている」とおもわれるのではないか。
  • 計画の推進にあたっては、各省庁との連携と住民の意見の集約が重要である。
  • 骨子の記載内容は、素晴らしい中部地方を実現するために項目が多くなる事はやむを得ない。具体的な役割分担の中で優先順位が必要がある。

B「住民・企業・行政の地域づくりの役割(一例)」について

桑田委員

  • これまでは、住民は行政を評価する立場であったが、これからは財政的に行政が全てを担いきれない時代となる。
  • 維持・更新の時代となり、新たな社会資本整備も困難となる。取捨選択して、国・県・市町村の責任範囲を明確にし、その代わり住民や企業が担うべき責任範囲を行政が強く打ち出すべきである。

中村委員

  • 日本の総人口が6〜7,000万人に減少することや、食糧の海外依存など考慮すべき事が多い。
  • 100年後を見据えたビジョンとして、食糧確保やモノづくりさることながら、生きることの安全と快適を考慮すべきである。

水谷委員

  • 中部地方は取り組むべき事が沢山ある。その反面、財政難と少子高齢化は大きな問題である。財政問題では、最終的には国民が負担しなくてはならないこと明確に示すべきである。
  • 国の財政状態が市町村より悪い中では、国は骨太な部分を担い、きめ細かいサービスは住民や企業が担うべきではないか。住民がきめ細かいサービスを要求するのであれば、どれくらいの財源が必要かを知らせるべきである。
  • 企業は、より良いものをより安く提供して社会に貢献するという存在意義がある。行政は、企業に自由な環境を与え、基盤整備によって企業を支援することが重要である。
  • 国民は、自身の力で生きていくことを考えるべきで、また、国や企業をバックアップするのは国民一人一人の力である。国に尽くすことのできる国民の育成が、国民の一番の義務だと思う。
  • 中部地方が日本を担おうとしている今、恵まれた中部地方に住む人々は、日本全体のために犠牲を払うという考え方が必要だと思う。
  • 企業、住民の役割について行政が踏み込んだ表現をすることは難しいため、まんなか懇談会として明確にすることを提案する。

松尾委員

  • 公益的な活動は、行政が行うべきと認識されてきたが、民が行う公益活動もあり、役割分担が必要である
  • 公益的な活動を民が行うという感覚を育てる方法を具体化し、実行することが重要である。

松浦委員

  • 中部地方には、外国人労働者との多文化共生という課題があり、住民・企業・行政が一体となり取り組む問題である。こうした問題を解決する中で自ずと役割分担は明確になる。
  • 即ち、地域住民は行政依存から脱却し自律性を高め、企業はより一層社会的責任(CSR)を果たす。行政は横断的に環境整備・調整機能を発揮することである。

小笠原委員

  • 中部地方ならではの具体的なアイディアを盛り込むべきではないか。
  • 例えば、道路や港湾などの社会資本の活用方法について、住民のアイディアを募るとか、住民参加を導入するなど、当ビジョンにPFIやPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)などの官民連携や公設民営等の観点を加えると良いのではないか。

奥野委員

  • 行政のあり方が問題である。国として行政が本来やるべき事を考えるべきである。行政がやるべきこと、やらなくてもいいことを明確にする必要がある。
  • 行政内の役割分担も重要で、自治体の財政自律や企画立案機能の育成について、国の関与のあり方を考える事が重要である。

3)これまでの意見を受けたその他の意見

奥野委員

  • 今後の社会資本整備を考える上では、以下の3点に留意する必要がある。
  • 1点目は、有効な社会資本の利活用であり、国際空港・港湾という大規模な社会資本とそこへ広域的にアクセスする圏域、そして、生活基盤としての生活道路や公共交通機関でアクセスする圏域との2層の広域圏的な整備が重要である。
  • 2点目は、PFI等を活用した効率的な整備方法の採用を増やしていくことである。
  • 3点目は、新しい社会資本への投資に制約がかかる中で、長く利用できる社会資本とすることである。日本の公共投資の対GDP比がもうすぐ2%台になっていく中で、社会資本が限界に来ているのではないか。

金井 中部地方整備局長

  • 国土交通省の役割は、基本的な安全・安心の実現と基幹的な基盤整備と考えている。
  • その中で、地域への社会資本投資が、確実に地域で取り戻せる範囲で整備を行うべきである。
  • 「まんなかビジョン」として、総花的ではインパクトに欠け、また、効果が説明できる範囲でどの程度限定して整備するかを考え、住民に対して分かりやすくまとめていきたい。
  • 100年先の議論に関して、「維持・更新」が重要で、当ビジョンに追記が必要と考えている。
  • 中山間地域の支援については、世界的にも経済合理性のみで支援を放棄している国はない。環境や人材等で担える面もあり、支援しつつ、国土保全を進めるべきと考えている。
  • 「自立」の意味を広げ、様々な機能分担から総合的に成り立つ地域となることを考えていく。

谷山 中部運輸局長

  • 100年先を見据えプロジェクトを着々と進める事は、現在の財政状況下では非常に厳しい。その中で、官民の役割分担を議論することは大変重要である。
  • 圏域間の競争のみでなく、日本全体を俯瞰し、どのような中部地方としていくかという議論も必要である。

以上


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