まんなかビジョン
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議事要旨

第16回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨


日時 平成18年12月11日(月)15:00〜17:00
場所 メルパルク名古屋 2階 瑞雲(東)

本懇談会のとりまとめ結果(須田座長による総括)

今回の議論の中で得られた意見をまとめると、以下のようなまとめとなる。

【理念】これからの中部は、日本のリーダーたる地域を目指していかなければならない

  • 底力のある地域づくりをしていかなければならない。
  • 中部として国全体の課題に率先して取り組んでいく姿勢を持つべきであり、これまでの中部の成功例、実績、中部独自の施策(中部メソッド)を全国に情報発信していかなければならない。
  • リーダーたる地域として国の重点的な施策も展開されることになるだろう。その中でプラス面とともにマイナス面や課題も出て来るであろうが、国に頼るだけでなく、中部の責務として中部の中で分担し、課題を解決していかなければならない。その際、地域間の役割分担を明確にしていく必要がある。その中で新しい地域経済モデルが生まれてくるのではないか。

・【課題】「環境先進地域」、「都市と中山間地域が交流・連携しバランスのとれた国土形成」の実現

  • これまでにない新しい視点をもって課題に取り組んでいく必要がある。
  • 都市回帰を促すとともに、過密なき新しい都市構造を実現する。
  • また、ものづくり(産業)の力をさらに高めていくために、ものづくり(産業)をサポートするような新産業の発展、支援を促し、産業の裾野を広げて行く必要がある。

理念を実現し、課題を解決するための留意点

  • 人口減少時代を念頭において、地域の交流の促進・連携の強化が重要で、特に環太平洋経済圏、日本海経済圏を背後に持つ中部地域と北陸地域の連携の強化、また、東アジア地域との連携強化を図っていかなければならない。
  • 水問題に対して重点的に取り組んでいく必要がある。
  • 地域の特徴である文化や伝統芸能についても広く保存活用を考えていくことも大切である。
  • 万博の成果、理念を継承し、「環境先進地域」となりうる施策を展開させ、新しい地域ビジョンを打ち立てていく必要がある。

 今後、中部が日本のまんなかに位置する地域の責務として、他地域との交流・連携を強化することが重要である。そのためには地域間の責任分担及び役割分担を明確にすることが重要である。

各委員の発言

水谷委員

  • 中部が日本の「まんなか」としての責務を果たしていくためには、例え中部にとってはプラスにならなくとも、全国を見てプラスになることであれば、積極的に取り組んでいく必要がある。
  • 国全体として考えるのであれば、資源の集中という視点をもって取り組む必要があり、中部の優れた点、プラス面に対して資源を集中していくべきではないか。
  • 一方、マイナス面の克服については、例えばゼロメートル地帯については事前に地域との協力によりその解決を図らなければならないが、全てのことを行政に頼るのではなく、住民一人一人が自覚を持って責任を果たしていく必要がある。
  • 今後もインフラ整備は中部において重要な課題であり、100年の計を考えて、中部の発展とともに全国の発展のためにどのように活用し、役割を担うべきかを考えていかなければいけない。
  • 例えば、東海北陸自動車道は、中部の発展にも寄与するとともに日本海側の地域の発展にも寄与するものである。また長期的に見ればリニアや中部国際空港の第2滑走路の整備も重要ではないか。
  • 首都機能移転の問題は議論がされていないが、東京に一極集中している現状は、災害を含めて考えると日本にとって好ましいことではない。人的な機能も含め分散できるところは分散していくべきではないか。

水尾委員

  • 中部が担っていること、中部の成功実績を日本全国、世界に向けて情報発信していくことも中部の責務のひとつであると思う。
  • 例えば、優れた交通ネットワークによる産業集積の充実など、インフラの充実がどのように活かされているかなど、中部独自の施策や手法である「中部メソッド」についても積極的に情報発信し、示していくことが全国の発展に寄与していくと思う。
  • 中部は外国人労働者が非常に多い地域であるため、今後は外国人労働者の子供の教育という点も重要な課題となるだろう。関東・関西と横断的に協力しながら中部が率先して教育インフラの整備に取り組むことは中部の責務にあたると思う。
  • また、中部に暮らす外国人労働者の方々に産業観光などを体験してもらい、帰国した際にその体験を伝えてもらえるような新しい交流のあり方を見出すことも必要だ。

松尾委員

  • 中部は地理的、経済的な面から言えば日本の中核である。国として必要な取り組みは中部が率先して引き受ける気概が必要で、日本のリーダーたる地域として自覚を持つことが重要ではないか。
  • そのためには、万博の成功、理念を継承し、「環境先進地域」をビジョンとして掲げ、「魅力ある都市と中山間地域の連携とバランスある国土形成」のコンセプトのもとに施策を展開していくことが重要である。
  • 水問題は21世紀最大の課題であり、中部が率先して中川運河や伊勢湾の再生など水をよみがえらせることに積極的に取り組むべきである。
  • また、景観問題も重要な課題であり、都市や地域の拠点間を幹線インフラでつなぎ、その間は緑を増やすなどバランスのある国土を形成しなくてはならない。
  • 水問題への取り組みと景観の保全と合わせて、各地にある歴史文化や芸術の継承に取り組むことで魅力ある地域づくりにつながっていくだろう。そのような取り組みの中で、地域づくりをリードする人材が育成されるのではないか。
  • 一連の取り組み実績や成果を積み重ね、ロードマップで示していくことが大切であり、地域間の連携・交流を念頭に置いたこれらの取り組みを通して、中部が日本モデルケースとなっていくことが重要はないだろうか。
  • 取り組みを進めていく上では人口減少時代をプラス面として捉えられるような新たな美しい中部の発展につながるキャッチコピーが必要である。例えば「中部は複数の拠点からなる真に豊かな地域」というものは如何か。

松浦委員

  • 現在、日本の機能は東京への一極集中となっているが、アジアとの地域間競争という点から考えると、日本の各地域が独自の「地域力」を強化していくことが重要である。
  • その中で、首都圏の機能を分散させ、各地域が分担するという考え方も必要となってくる。特に災害面を考えると、機能は一極集中ではなく、分散させておく方がリスクを回避しやすい面もある。従って、産業界では地震など災害の際のBCP(Business Continuity Plan)※があるが、国としてのBCPについても検討が必要ではないか。
  • その際、中部は産業面、経済面おいて十分にその機能を担うことができ、日本のリーダーたる責務を果たしていけるのではないかと思う。
  • また、中部は外国人労働者が多く、他文化との共生など国際的な取り組みに対しても意識が高い上、空港・港湾・道路など社会資本も充実しており、他地域と比較して高い地域力を有している。さらに、万博の成功、理念の継承から環境先進地域という点においても首都機能を十分に担える力は備えていると思う。
    しかし、東京、大阪と比較して都市の求心力という点では現状劣っているが、首都機能を担うことによりキャッチアップできると思う。

    ※企業存続の生命線である「事業継続」を死守するための行動計画(経済産業省「事業継続計画(BCP)策定ガイドラインの概要」より)

小笠原委員

  • 中部は他地域と比較して余力のある地域であり、国が抱える課題を率先して引き受けていく責務・役割があり、特に、経済の発展、福祉の充実、環境保全という課題が挙げられる。環境、安全安心、コンプライアンス、地域の社会的責任(RSR)等に配慮した、地域住民の期待を裏切らない地域経営モデルを構築していく必要がある。
  • 産業面においては、高度なものづくり産業を今後も維持し本社・本店経済の強化を進めていく必要があるが、ものづくり産業をサポートするサービス産業の振興にも力を入れていくべきだ。
  • これらを実現するためには、多機能な業務機能の誘致・集積、経営技術の支援に目を向け、新産業の発展に向けた産業支援も必要である。また、交通インフラのさらなる高速化等、利便性の向上も必要だ。
  • 人口減少時代に突入し、都市への人・機能の再集中を図っていく必要があり、率先して取り組んでいく必要がある。人・モノ・情報が高度に集積した高機能な都市の形成が求められると思う。
    都市への人・機能の再集中と共に、所有権の制限、都心回帰を希望する人たちのための支援の充実、郊外の開発規制等、困難な課題へも取り組んでいくことで日本の中心と言える地域となっていくのではないか。

東委員

  • 中部は、経済的にも環境的にも優れた地域であると思うが、それを如何に地域住民が実感し、如何に誇りを抱いてもらうかということが重要だと思う。
  • 自分たちの地域を自分たちで作っていくという意識を醸成させる上では、中部が今後どうなっていくのかを示し、国・県・市町村の役割分担を明確にし、どのような施策を展開していくかを明確にしていくことが重要である。
  • 中部の本質的な戦略という視点に立てば、中部の各港湾の国際戦略や、北陸の港湾との連携を如何に図っていくのかという視点が地域マネジメントを考えていく上で重要ではないか。
  • 人口減少社会、少子高齢社会を迎える中で、ユビキタスネットワークの整備など、新しい視点や価値のあるインフラ整備を展開していく必要がある。
    地域主導の地域づくりが求められ、地域の責務・役割を担っていくためには、底力のある地域になることがこれからの中部の責務だと考えている。

奥野委員

  • 人口減少時代に突入し、国の活力の維持を図るためには、人の移動や交流が生み出す活力がその源になると思う。
  • 特に日本海側と太平洋側の広域的な連携が重要である。日本海側と太平洋側をつなぐ道路も整備され、つながりも強くなってきている。互いに良いところを引き出していくことが重要である。
  • 東アジア経済圏が一体化していることを考慮に入れ、中部のビジョンを考えていかなければならない。中部圏として独自の国内外ネットワークを形成していく必要がある。
  • 都市と中山間地域のつながり、特に農山漁村の力を強化していくという点が重要である。その中で、1つは「新たな公」を育成するためには、地域の特産品を活かした社会活動やコミュニティビジネスの担い手の育成とソーシャルキャピタル等のコミュニティ活動などを支援する資金供給のシステム構築がじゅうようである。一方、人の移動・流動を促すためには団塊世代を中心とした2地域居住を実現できる人の移動・流動の支援や都市と地方がマッチングするシステムの構築、情報プラットフォームの整備、限界集落への対応などが大きな課題として挙げられる。これらが日本のリーダーとして中部が取り組むべき課題であろう。
  • 国土軸を形成する地域の取り組みは個々ばらばらに取り組まれており、国土軸として一体となった取り組みに至っていない。中部においては、北陸と東海を結ぶ街道を一体的に活用し、それが如何に地域に貢献するか、日本全体に寄与するかという点をしっかりと議論していく必要がある。
    また、今後の中部について議論していく際に必要な視点として、中部独自のネットワークの形成、中部独自の計画づくりが必要で、その際各県でプロジェクトを山分けせず、中部での一体感、また、中部と北陸の一体感を醸成していく必要がある。

金井中部地方整備局長

  • これからの中部を考える際に一番懸念していることは、集中か分散かという点である。中部にインフラが集中することで様々なメリットがあったが、人材、環境、国土利用のバランスなどを考えるとこのまま集中していくことが良いことなのかしっかりと議論して方向性を導き出していく必要があると考えている。
  • 国土全体をバランス良く利用していくことが重要であり、中山間地が機能しないと都市機能も衰退してしまうということがある。特に水資源の確保、保全についても合わせて考えていく必要があると思う。コンパクトシティの議論と広域的な機能の配置については両立して行っていく必要があると考えている。
  • 現在、ITSを活用したまちづくりなど徐々にではあるが新しい価値を盛り込んだ施策が展開されている。今後は新しい価値を住民が実感できるインフラ整備に積極的に取り組んでいきたいと考えている。
    国土軸の問題については、これまでそれぞれの地域でどのように活用していくかということが議論されてこなかった。広域でどのように役割分担していくかを議論しておくべきだったと感じている。伊勢湾については、他地域に先行して利活用の仕方、地域の役割分担について議論していきたい。

谷山中部運輸局長

  • 国土計画を考えていく上では、地域の独自性を全国に打ち出していくことになるが、日本海地域との連携、東アジア経済圏における産業競争力を睨んだ中部の独自性の発揮が求められると思う。
  • その中で、産業観光など広域的な観光施策を進めていく必要があり、北陸などの空港を如何に活用していくかという議論をしていく必要もあると考えている。また、産業競争力という視点に立てば、物流事業者も含めて高めていけるよう取り組みを進めたいと考えている。
  • 中部が日本をリードしていく上で「環境」や「交流」といったテーマは、中部が率先して取り組んでいくテーマになるかと思う。たとえば「環境」というテーマであれば、自動車の問題等も含め、中部が独自性を発揮できるような施策を展開していかなければならないと思っている。
  • また、地域独自の計画が中心となっていく中で、国、県、市町村がそれぞれどのような役割を担っていくのかを明確にしていく必要があると感じている。

以上


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