まんなかビジョン
| もどる |
議事要旨

第15回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨


日時 平成18年7月24日(月)15:00〜17:00
場所 名古屋銀行協会 5階 大ホール

本懇談会のとりまとめ結果(須田座長による総括)

今回の議論の中で得られた意見をまとめると、以下のようなまとめとなる。

新しい地域・地域間関係のあり方について

  • 全国的な視野で、中部が日本のまんなかに位置することに伴う責務、役割を考える必要がある。
  • 商工業を担う市町、農林業を担う市町村などで地域間の役割分担を考える必要がある。
  • 地域によって異なる特性から、「自立」とは何かを考える必要がある。
  • これまでの「平等」に行われてきた社会資本の整備という考え方から、「選択と集中」、「重点化」という考え方に切り替える必要がある。その中で、「環境」という視点は重要な視点のひとつと考えられる。

バランスの良い国土づくりのあり方について

  • 国際的な視野で中部の国土づくりを考える必要がある。
  • 都市と中山間の広域的かつ総合的な地域づくりのあり方を考える必要がある。その際、キーワードとなるものは、「防災」、「水問題」、「農林業のあり方」、「限界集落への対応」、「暮らし満足度の向上」、「人材確保」といったものが挙げられる。

今後の進め方について

  • 例えば、「交流」のように新しい視点、中部らしい象徴的な視点をもってフォローアップを進めていく必要がある。
  • また、新しい視点、中部らしい象徴的な視点を持つとともに、新しい中部の実現に向かって地道な努力が求められる。それについてもさらに適切に評価をし、フォローアップを行っていく必要がある。

これらのことを中部が日本のまんなかに位置する責務として進めて行かなければならないと思う。

各委員の発言

小出委員

  • 今年になって少し時代の風が変わってきたと感じる。たとえば、去年までは「規制緩和」や「民営化」など自由への志向に流れていたが、現実の社会の流れでは、「環境・景観創造に向けた取り組み」、「安全・安心な国土作り」などブレーキをかける事例が多くなったように感じる。
  • どの程度ブレーキをかけたらいいのか、どの程度アクセルを踏めばいいのかという、時代の風に応じた議論ができればと思う。
  • また、本来、「市」は商工業を振興する自治体、「町・村」は農林漁業を振興する自治体という役割と理念があったように思う。経済合理性の下で進められた市町村合併に対するリアクションも意外に強く、冷静に考えるべき時代を迎えていると思う。
  • これからのビジョンの新しい視点として、地域が住民にどれだけ貢献できるのかといった、住民側から地域や行政の貢献度を測るといった視点も今後必要になってくると思う。 ・ 中部のビジョンを考えるうえでは、かつての「未来論」とならぬよう現状をしっかり把握し、それを新しいビジョンへ反映させていく必要がある。

中村委員

  • 高齢化社会と少子化を同時に迎える中で、工業などモノづくりを中心に行う地域と農林漁業を中心に行う地域など、地域ごとの役割分担が明確になってくるのではないか。そうなれば、都市から中山間地へ行くといった観光産業も振興するのではないかと思う。
  • 物流については、食料の供給、エネルギー供給の必要性を考えれば、道路、港湾、空港を担う国土交通省としては、総合的な見地で社会資本整備を考えていく必要がある。
  • 中部5県においては、人口減少社会の中で地域の役割分担を明確にし、「適疎適密」の新しい観点から議論していく必要がある。
  • 防災については、災害対策を着実に行っていく必要がある。また、環境については、里山だけではなく海岸線も含めて、様々な環境保全に配慮して開発を進めなければいけない。防災と環境保全の重要性を十分考慮に入れたビジョンであってほしいと思う。
  • 今後は、世界、アジアの中の中部として国際競争力強化の議論をしていく必要がある。その中で国土交通行政としては、陸海空のバランスのとれた施策を講じ、陸ではリニア新幹線の整備、海ではスーパー中枢港湾等の機能の向上、空では中部国際空港を真のハブ空港としていくための施策・事業を講じていく必要がある。

水谷委員

  • 中部は全国的に見ても非常に恵まれた地域である。この恵まれた部分をどう利用していくかが今後の課題である。格差是正の考え方には相反するが、いい所は大いに利用する必要があると思う。
  • 現在の様々な国土整備は、税金ではなく借金をして進められているが、これからの財政を考えるともはやこのようなやり方を続けている余裕はない。けれども、このような現状を我々は認識しているのだろうかと疑問に感じる。
  • まずは借金を返さなければならない。そのためには相当な支出を削減する必要がある。そのためには、「選択と集中」が必要であり、その中で地域間の格差は生じるが、何に重点を置くかを真剣に考え、真に必要な施策を講じていく重要性を感じている。

松尾委員

  • ビジョンを掲げることは、社会資本整備を考えるうえで重要である。プロジェクトの優先度を考え、ロードマップを明確にしたうえで進めていかなければならない。
  • 今後のビジョンにおいては、これまでに進められた「万博」と「中部国際空港」という2大プロジェクトに相当する中部らしい象徴的なものが必要と考える。
  • 例えば、人口減少社会の中で地域の活性化を保っていくためには「交流」もそのひとつの施策である。交流には装置が必要であり、当地としては、中部国際空港に2本目の滑走路を整備するという議論も必要になってくるのではないかと思う。
  • また、中部らしい象徴的な施策と併せて地道な努力も必要である。中山間地域の保全は、広域防災につながっていく。派手さはないが、着実に進めていかなければならない施策であり、都市と中山間地域のバランスの良い国土の保全・発展につながっていくと考えている。
  • 新しいビジョンを考える際には、思い切った切り口や視点が必要であり、従来の東西軸、南北軸といった視点だけでなく、政治、経済、歴史的な視点など様々な観点から切り口や視点を導き出す必要があるのではないかと考える。

松浦委員

  • 10〜20年先を見据えたビジョンの議論をするうえでは、いくつかの前提条件の中で議論を進めていく必要がある。例えば、環境については地球温暖化が進展したときの環境の変化、少子化については移民の受け入れ等、国際化については外への国際化だけではなく、内なる国際化についても考えていく必要がある。
  • 静岡県では静岡市が政令指定都市となり、来年4月には浜松市も政令指定都市となる。この2市は、都市、農山村、漁村も含まれた広域的な都市である。従来型の産業集積に偏った施策ではなく、農林漁業や観光も含めた総合的な機能をもつ都市が形成されるため、それ相応の行政基盤を強化し、自治能力を向上させることが必要になる。
  • 中山間地域の川上での営みが健全でなければ、下流域にある都市の営みも健全にはならない。中山間地域が環境保全の場、都市住民の癒しの場として地域に貢献できれば、財政投入をしていく工夫ができ、都市のコンパクト化と合わせて行政サービスや財政運営の効率化を推進していくことで、バランスの良い国土になっていくだろう。

東委員

  • 近頃の災害を新聞などで見て、現状の社会基盤は安全性の高いものなのかという懸念を抱いた。また、環境・景観創造についての満足度調査の結果から、温暖化対策として社会基盤が整備され機能しているかを評価する必要があると思う。
  • 先日行われた複合型防災訓練に関しても、災害に合わせた社会基盤整備をどこまでするかということが、安全な暮らしを守るうえで重要だと思う。
  • 環境については、総合的な見解として地球規模で考える必要があり、中部地域としても共に助け合う仕組みづくりが重要になってくると思う。
  • また、中部地域の「暮らし満足度」を評価していくことも大切だと思う。心豊かなライフスタイルを形成するための中部らしいまちづくりを進めることが重要であり、都市機能をいかに充実させ、それらをいかにネットワーク化させていくかが次の課題である。
  • 連携という点からは、お互いの情報を共有し、何が地域のポテンシャルかを認識することが観光促進という観点において重要な位置づけとなるだろう。
  • また、少子高齢化社会を迎える中では、高齢者には生きがいづくり、子供には中部の大自然を知る環境教育が必要だと思う。住民が暮らしやすい、子育てしやすい基盤整備が行われることが理想である。

奥野委員

  • コンパクトシティというのは、約10年前までは統一したイメージがあったように思うが、現在では地域の状況に合わせて様々な街がイメージされており、今となっては何を意味するのか分からなくなっている。
  • 「自立」というものを考える場合、中部圏、都市域、中山間地によってそれぞれ意味が異なる。
  • 圏域の「自立」を考える場合、地域自前の国際戦略を立てられることが「自立」と考えている。今後、国土形成計画の議論の中では、北陸圏と中部圏の協議会の中で日本海と太平洋を結ぶ国際戦略も議論されることと思う。
  • 都市や中山間地域の「自立」ということになると、財政的に非常に厳しい状況にある市町村もあるが、自分たちにできる何かをやろうという姿勢を持ち、行動に移している姿勢から「自立」が実現できると考える。
  • これまでの施策展開によって、社会資本はある程度整備されてきたと思う。その中で現在では、人材の確保が重要課題となっているが、団塊世代のリタイア後、人材を受け入れるマーケットが国にも地方にもないというのが現状である。人材を如何に確保していくかという点も「自立」を考えるうえでの鍵となると考える。
  • また、限界集落についても議論をしなければならない。このような地域は線引きをするのか、他地域へ移転をしてもらうのかを考えなければならない。ただし、行政と住民との信頼関係がなければ移転を促すことは難しい。
  • 「自立」という中身を考えることは大変難しいことではあるが、人口減少社会においては、人口減少をどの程度に留めるのが最適で、どのような社会を構築していくかを考えていくことが大切ではないかと思う。

桑田委員

  • 中部はモノづくりを中心に発展してきた。特にそれを支えたのが、高度成長時代に農村から都市へ働きに来た人たちであり、その影響で農山漁村が疲弊している状況にある。
  • 今後、都市と農村の均衡ある発展を重要な課題としたとき道路の果たす役割は非常に大きいことを認識しなければならない。
  • 耕作放棄地の増加は、環境問題や防災機能の低下、食糧自給率の低下へもつながる。今後の農協施策については原点に立ち返り、都市と農村が均衡ある発展をしていくために真に必要な施策を考える必要がある。
  • 少子高齢化は、地域はもとより国をあげて取り組んでいかなければならない。その中では、農村の住民が都市と同じ水準で生活できる環境づくりが必要である。
  • 今後、水対策が大きな課題になってくると思う。利水、治水のためのダム整備は、安全な生活を営むためにも優先度の高い施策として取り上げる必要があると思う。
  • また、地震などの災害直後の緊急的に対応のために、道路の整備だけではなく、空からの対応についても考えていかなければならないと思う。

須田座長

  • 中間評価は、定量的、定性的な評価で分かりやすいものとなっている。ただし、中間評価の時期が万博の開催や中部国際空港の開港と重なっているため、それらのインフラ整備として評価が重なり、より良い結果となっている部分もある。
  • この結果を過大評価せず、万博開催や中部国際空港の開港との相乗効果として受け止める必要がある。
  • 人口減少問題、少子化問題は、現時点で最大の問題である。少子化対策を講じたとしても、今生まれた子供たちが成人となるまで20年かかる。それまでには、高齢化はさらに進み、社会構造の破綻も考えられる。
  • その打開策として、外国人を受け入れるということも考えられるが、処遇の問題、言語の問題、文化・宗教の問題があり、なかなかうまくいくとは考えにくい。
  • このような問題を考えるうえでは、人口が減少する際の社会の再構築という視点での議論が必要であり、今後のフォローアップの視点としても重要ではないかと考える。

金井中部地方整備局長

  • 中山間地域が荒れることは、災害機能の低下など都市への影響もあることを考えなければならない。このような問題は社会資本整備だけで解決するものではないが、国土交通行政のビジョンのひとつとして打ち出すことも重要と考える。

以上


| ↑ ページトップへ戻る |