日時:平成17年12月7日(水)10:00〜12:00
場所:名古屋銀行協会 5階大ホール
1.開会
2.開会挨拶
3.新規委員の紹介
- 紹介:木下企画部長
- 挨拶:小出宣昭委員
- この会議は中部地方のことを一生懸命考える会ということで非常に楽しみ。
- 中日新聞の社会部で勤めてきた経験を通じて圏域について述べると、つまるところ、「なわばり」であると感じる。
- 台風や地震時に避難所の体育館などへ取材に行くと、人はまず隅を陣取り、その次に壁際を取る。人間は本能的にボーダー(境界)を必要とする。これを今回の圏域の議論に置き換えると、東海3県は太平洋側をボーダー(境界)としてまとまり、北陸3県は日本海側をボーダー(境界)としてそれぞれまとまるため、東海と北陸はまとまりにくいといった特徴があるかと思う。
- 事務連絡(木下企画部長)
4.懇談会
- 中部圏の考え方について
- 主旨説明(須田座長)
- 圏域を議論する必要性として2点ある。
- 1点目は、先般の提言を今後フォローアップしていくうえで、地域的な対象範囲をある程度具体的にイメージしないと焦点が絞れないということがある。
- 2点目は、国土形成計画において全国を10程度のブロックに分けて考えていくということで、地域として自立できるまとまりとして圏域を論じる必要がある。
- この場では、圏域として何県までを含めるということを決めるのではなく、圏域を考える際の基本的考え方について議論し、まんなか懇談会として提案発信していきたいと考えている。
- 資料説明(福田企画調整官)
- 自由討議
- 奥野委員
- 昭和37年に全総が作られ、地方自治体にとっては大きな指針性を持っていた。しかし、平成10年の「21世紀の国土のグランドデザイン」のあたりから指針性が弱まった。今の時代に全総を作る意味があるのかと考えると疑わしい。このような問題意識から、地方主体のブロック計画と新たに国土形成計画を作ることとなった。
- 全総の指針性がなくなった要因としては、「国土の均衡ある発展」という理念が都合よく様々な解釈がされたことと「全総=開発=環境破壊」という開発への批判が起こったことが挙げられる。
- 従って、「開発からの脱却〜自然と共生した美しい国土の形成〜」が望まれる。
- ブロックの分け方については、7つが妥当か、8つが妥当かという議論もあったが、最終的には10程度のブロックに分けて考えるということになった。先般、地方制度調査会が打ち出した道州制の方針として都府県を分割しないということが示された。
- 中部圏は、「自立」できる圏域となりうるが、北陸地域など経済的な「自立」が困難な地域もあり、地域がバラバラになってしまいかねない。
- 従って、大きくまとまった圏域をつくり、その中に結びつきが強い地域同士でサブブロックを形成し、相互に支えあうというような計画もあるのではないかと思う。
- ひとつのまとまりとしては、湾から見た流域圏が重要であると考えており、国土審議会の場でも強く主張している。流域圏として捉えなければ、5全総のように「東海」というまとまりが消えてしまうことのではないだろうか。
- 須田座長
- これからの議論については後々、国土審議会に反映させたい。各委員には現在考えうるところで中部の圏域に含まれる県名を挙げて欲しい。
- 桑田委員
- 小学校の教科書では、資料にある9県を中部として挙げているのが意外であった。
- 岐阜県は、7つの県に囲まれており、隣の県との連携は避けて通ることはできない。現状では、愛知県、三重県、滋賀県、福井県、富山県との付き合いが深い。特に愛知県と三重県とは共同体として深い付き合いがあり、今後もその関係は続けていきたい。
- 東海北陸道、中部縦貫道、東海環状道の整備に伴って、人・物の流れが大きく変わるであろう。
- 中部の捉え方としては、広い意味で捉える必要があると思う。岐阜県を中心に考えるであれば、岐阜県に隣接する7つの県と静岡県ということになる。
-
- しかしながら、中部の圏域を考える場合、まんなか懇談会に参加している4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)で出発させるのが最も地に足の着いた形であると考える。
-
- 国土形成計画の議論や道州制の議論にも非常に関心を持っている。
-
- まんなか懇談会に参加していない県が我々の議論の結果を素直に受け入れられるか否かということを懸念している。
-
- 私見としては、全総計画におけるブロック範囲が中部の圏域として望ましいと思う。
-
- 小出委員
- 金沢市にいた頃に、金沢市の情報の流れを調査したことがある。その際用いた指標は、テレックス、市外通話、JRの定期外旅客数で、結果は3指標がほぼ一致した。
- 北陸3県の他地域とのつながりを見ると、名古屋よりも京阪神、東京都のつながりが強く、東海とのつながりは薄い。
- 石川県:京阪神(約40%)、東京(約20%)、名古屋(15〜16%)
- 福井県:京阪神(約50%)、東京(約20%)、名古屋(約20%)
- 富山県:京阪神(30%台)、東京(30%台)、名古屋(20%台)
- 富山県は41号線を通じてトヨタ関連の物流があり、東海北陸道が開通すれば富山を中心に、特に物流面で東海と北陸のつながり方は変わると思う。
- 各県の情報と物流のつながりについてデータを収集する必要があり、その結果が以前と変化がなければ、北陸をサブブロックとしたゆるい連携の中部圏域を目指すのが良いと思う。
- やはり、「なわばり」という感じがないと気合が入らないのではないか。その中で、東海と北陸が一緒になって気合が入るかどうかという懸念がある。
- また、中部山岳が、これまでの東海と北陸をつなぐ際に、環境や風土の違いといった障害を招いていたと思う。しかしこれを自然・環境として捉えなおせば、これからの大きな財産であり、日本として共有すべき財産である。将来的には中部山岳を強みとした圏域の形成が重要であり、このような議論が展開されれば、高尚な圏域が形成できると思う。
- 関東と関西の境は、関所で言えば大阪の関所であったり、箱根の関所であったりと時代によって変化してきた。
- JR関西線は名古屋から始まっており、この地域は歴史的に住所不定な感がある。このようなことも圏域を形成していくうえで強みにはできないか。
- 水谷委員
- この問題については長年悩んでおり、公式には中部は9県となっている。
- しかし、滋賀県はどうなのか。また、福井県についても無理があると思う。新潟県、山梨県も関東に入るのでヘないかと考える。
- 結論が出ないのが正直なところであるが、東海4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)と長野県、石川県、富山県という構成が現実的であると思う。
- ブロックは、東海ブロックと北陸ブロックに分けたうえで、両ブロックを合わせて「中部」とした方が自然であると思う。
- 水尾委員
- 考え方としては、自然風土、歴史・文化等を考慮したバイオリージョン(生命地域)の考え方でも圏域について議論する必要があるかと思う。
- 一般の方のイメージを考慮することも重要ではないか。石川県、福井県、富山県の北陸3県は中部に含まれるが、山梨県、滋賀県、長野県は中部に含まれるのかは微妙という傾向にあると思われる。
- 以上ような観点から北陸は重要であり、中部の圏域として北陸3県を加えて考えるべきであると思う。是非このような会議に参加して欲しいと思う。
- また、資料にある新聞記事に挙げられているように、中部のシンクタンクが連携して「地域交流連携連絡会」が設立された。圏域の問題を多面的に捉えるためにも、このような機関との動向も参考にしてはどうか。
- 東委員
- 文化、経済の基本となる人・情報・物の流れから、各県のつながりについて把握する必要はあると思う。
- 社会構造が変わる中で、スーパー中枢港湾のような重要な社会インフラを共有するという観点や、観光という視点でルートを共有する地域のつながりなどから圏域を考えることもできる。
- ヨーロッパでは港湾を中心に国境を越え、広域的に経済の効率化、活性化が図られている。
- 一方で、環境という側面から流域や海域、沿岸域といった視点からも考えたい。
- やはり、県を越えた連携が必要になってくるのではないかと思う。また、今後アジア諸国を意識するのであれば、北陸は重要な位置として見るべきではないか。
- 圏域の範囲としては、小学校で教えられている9県に三重県を加えたものが適当ではないかと考えている。
- 中村委員
- タクシーの運転手に聞くと、万博開催中のホテルは連日満室であったが、現在は空室が多く、タクシーの乗車も少なくなったようだ。つまり、万博は一過性のものであったということになる。
- 来場者のうち外国人は5%と少なく、外国人を集める国際的なイベントが必要であると思う。近いところで行われるものとしては、2006年のワールドカップ、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博がある。
- 中部で開催する国際的なイベントとして、宇宙博、ロボット先進国としてロボット博を開催したらどうか。また、経産省が取り組んでいるメディカル・バレーなどのように「健康」をテーマにした催しがあると良いと思う。産学官民が連携した次なる一手が必要ではなかろうか。
- 圏域について考えた場合、三重県は名古屋とのつながりが強いのか、大阪とのつながりが強いのか分からない中途半端なイメージがあるが、県民は東海3県としての意識があるように思う。しかし、尾鷲市や熊野市では和歌山を、伊賀市では大阪とつながりが強いと考えている人が多いのが現状である。
- 関東と関西の分かれ目をつかんでおく必要があるのではないか。現在では、関ヶ原や周波数の違いがそのひとつかと思う。
- 生物学的に言えば、ホタルの点滅が関東と関西では異なり、そのまんなかであれば中部という圏域が導き出せるのではないか。
- 街道などの歴史をひもといていくと議論が複雑になるため、別の機会が必要になるかと思う。
- 谷岡委員
- 圏域とは、にじむものであって無理に線を引くものではないと思うが、役所としては、管轄を決めないと先に進めないというのが実情である。
- 考え方としては、大きく捉えてサブブロック化するか、小さく考えて統合するかの2通りが考えられる。
- 地域住民の視点から考えれば、小さいまとまりから考えていくべきであると思う。
- マクロな視点に立てば、「自立」を意識することが重要であろう。プラグマティズム(実践主義・実用主義)を持つ長期的な視点に立った戦略が必要であろう。
- 他の圏域との関係や拠点インフラの有効な活用方策について戦略的に考えていく必要がある。特に戦略を実践するうえで欠くことのできない装置を準備する必要がある。
- 圏域のあり方については、徳川家康が故郷である三河を250年守ってきた戦略性について研究する価値がある。ただし、その時代は鎖国をしており現在の外とのつながりの違いについて考慮する必要がある。
- ストラテジーというゲームがあるが、戦略上重要な場所を押さえなければ攻略できない仕組みとなっている。「自立」した地域の拠点のあり方について物流、情報流を加えたストラテジー(戦略)は我が国にはないのが現状である。
- 中部の圏域の考え方としては、小さいところからまとまっていくのが良いと思う(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)。また、伊勢湾と三河湾の共有も考慮し、流域で考えればもう少し上に伸びることも考えられる。
- 日本はアジアの東なのか、太平洋の西なのかという議論もある。
- 九州はアジア、北海道・東北はユーラシア、北陸は日本海を隔ててアジア、東京は太平洋を向きアメリカを強く意識している。大阪は内陸的で福井県や石川県、四国は太平洋に向いている。
- 太平洋に面した縦軸は日本の戦略上重要な軸であるが、アジアに向いている地域と太平洋に向いている地域つなぐ横軸をいかに作っていくかが重要であり、中部圏として成立しうるよう、今から働きかけていくべきではないか。
- 小笠原委員
- 圏域の問題において中部地域は錯綜している。
- 中経連には長野県が含まれている。よって、これまでは長野県を含めた5県で考えてきた。
- 国土審議会の資料によると都道府県を越えた構想の中に、中部5県がまとまった取組みはない。中部4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)と山梨県ではリニア、3県(愛知県、岐阜県、三重県)では三遠南信と伊勢湾について記載されている。
- 当地域で考える圏域には必ず三重県を含めるべきで、愛知県、岐阜県、三重県の東海3県と周辺地域がケースバイケースで連携を図っていくべきであると考える。具体的には、東海3県と遠州(静岡県)、南信(長野県)、インフラがつながることを考えて富山県と石川県となる。
- 奥野委員
- 人・物・情報の流れについて調べたことがあり、九州の福岡は求心力が高い。名古屋は、拠点性は低いが大阪とのつながりが強いという特徴がある。
- 国土審議会の場では、「東海」という圏域はないという議論が出ており、「東海圏」は全国的にも十分に認知されているとは言いがたい。ゆえに、私は流域圏という考え方を主張している。そのような状況の中で、人・物・情報の流れのデータと併せて圏域として成立するための材料が欲しい。
- 谷岡委員が圏域はにじむものだと言われたが、リニアや太平洋新国土軸も考慮すれば、中部以外の圏域も大きく関わってくることとなり、それも考慮した圏域の考え方を持つべきである。
- ブロックをまたぐ連携の調整方法を考えなければならない。
- 須田座長
- 今年10月、中部9県で「中部広域観光協議会」というものを発足させ、9県が広域で観光に取り組んでいきたいということで意見が一致した。
- そのなかで、「中部」は「東海」というイメージが強いため、「(東海・北陸・信州)」という文言を追加して欲しいとの要望があった。すなわち、(東海・北陸・信州)が中部の各地域の「なわばり」と考えられる。しかし、いつかは「(東海・北陸・信州)」という文言をとりたいと強く思っている。
- 圏域を形成するうえで名称は重要である。「中部」は英語で「セントラルジャパン」となり、非常に良い響きであるが、日本語では既存概念が含まれイメージがボケる。
- 名称は重要であり、それによりどのようなアイデンティティ(地域への帰属意識)を打ち出すことができるかを考える必要がある。
- 須田座長による総括
- 今日これまでの議論の中で幅広い意見を頂戴した。
- 本日の意見をまとめると、圏域について議論するうえで考慮すべき点は、以下のようになるかと思う。
- 「自立」できる圏域を形成するための装置の準備と戦略を立てる必要がある。
- 中部における人・物・情報の流れなど社会的条件から圏域を考える必要がある。
- 自然条件や歴史風土、文化的な側面から圏域を考えることも必要であり、流域圏による考え方も必要である。
- 圏域を形成するうえでは、地域のアイデンティティ(地域への帰属意識)を打ち出せるネーミングも重要である。
- 中部というイメージが薄いため、中部という概念ははじめにあるべきものではなく、まとまるべき補強材料を見つけてから圏域について議論を展開していく必要がある。
- また、圏域にどの県を含むかという議論においては、以下の意見にまとめられるかと思う。
- 愛知県、岐阜県、三重県については圏域に含むことで見解が一致している。
- 静岡県、長野県については、含むべきという意見が多数であった。
- 北陸に対する関心が意外に高く、北陸地域の方も交えた議論が必要ではないか。
- 中部を広義に捉えることが必要。具体案としては、北陸をサブブロックとして含めるという考え方もあるのではないか。
- 次回までに、人・物・情報の流れについてのデータの提供をお願いしたい。また、北陸の方をオブザーバー的にこの会に入れられないかといことを検討していただきたい。
5.閉会挨拶
6.閉会
以上
|