まんなかビジョン
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議事要旨

第8回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨

日時:平成16年9月24日(金)13:30〜15:30
場所:KKRホテル名古屋 3階芙蓉の間

1.開会
(1)開会あいさつ
(2)委員紹介

2.懇談会
(1)「テイクオフ中部2005」について
○事務局
  • 「テイクオフ中部2005」とは、2005年をスタート地点とし、中部地方の飛躍と持続的な発展を目指すことが次なる課題と位置づけ、地域と協働で中部地方を支える社会資本整備に取り組む方針として位置づけている。
  • 今年3月に策定した「まんなかビジョン(改訂版)」は、今後10〜20年後の地域づくりの目標を掲出した中期的な中部地方の将来像を示したものであり、さらに長期的な視野を持ち施策を重点化し牽引力のある施策を推進していく考え。
  • 今、求められる視点としては「まんなかビジョン(改訂版)」をまとめた後に国の新たな視点や地方の新たなニーズとして、以下の動きがありまんなかビジョンをより的確にすすめていくことである。
    ◇ 国土審議会で議論されている国土の総合的点検
    ◇ 景観法等の景観緑三法による美しい都市景観、国土形成の動き
    ◇ 国土交通行政のグリーン化ともいうべき環境行動計画
  • また、地域のニーズに関する動きとして以下の大きな動きもある。
    ◇ 地域を活性化する主体的な取り組みに国として支援する「地域再生計画」
    ◇ 万博を期に世界からの来訪者への積極的な観光・交流の取り組み
    ◇ 地域の特性に応じた規制の特例措置を導入する「構造改革特区
    ◇ 集中豪雨による水害や地震といった広域災害の懸念などの「防災対策」
  • このような地域づくりを取り巻く新たな動向を踏まえて、自由なご意見をいただきたい。自由討議に入る前に話題提供として以下の論点を提起させていただく。
    ◇ 産業施策と広域連携について
    ◇ 地域づくりと観光について
    ◇ 拠点都市機能と都市間ネットワークについて
(2)自由討議
○須田委員(座長)
  • 日本のまん中である中部が日本を引っ張っていくことは当然のこと。そのためには何をなすべきか。「テイクオフ中部2005」では、これが命題となろう。
  • 本日の議論では、「産業」と「観光交流」の2つの柱があるが、いずれにおいても、既存のストックを有効に使い、さらにこの地域が日本を牽引させるためには何をなすべきかを考えていくことが大事かと思う。例えば、広域連携、産業力の強化を基盤に次世代型の交通ネットワークの構築を目指すこと、あるいは個性的な地域づくりを進めるための自然環境の再生・観光振興等も重要な視点ではなかろうか。

○水谷委員
  • この地域は全国的にも注目されている。2、3年先は現在のまま活気があるかもしれないが、10年、20年先をどうすべきかということが重要な課題だ。特に社会資本の整備には時間を要する。その間に世間は様変わりしてしまう。「日本の将来はこうあるべき」というものを打ち出し、先を見通してプロジェクトを進めることが必要である。
  • 10年、20年後を考えると、活躍の主体は民間である。民間が活躍するための基盤整備を行う必要がある。なぜなら中部地方には今後も我が国を牽引する産業がある。日本全体で見た場合、中部地方が我が国の産業を引っ張っていく使命を担っている。
  • この地域は東海環状自動車道や東海北陸道など、今まで力を入れてきた分、基盤整備が進んでいるが、決して十分ではない。「これまでやってきたのだから大丈夫だ」という見方や目先の議論になると、中部地方の基盤整備は後回しにされる恐れがある。中部地方の発展を支える重要なインフラとして、東海環状の西回り、東海北陸道の未開通部分などを確実に整備することが重要である。

○奥野委員
  • 中部圏の中を見た場合、地域によって特徴があり、それぞれの役割においても変化が起きている。例えば、西三河から岡崎、豊田、尾張地域は特に元気な地域である一方で、岐阜や四日市は名古屋のベッドタウン化が進み、名古屋との関係を強めつつある。
  • 名古屋に商業機能が集中し始めている。また、本社機能の名古屋への移転、外資系企業の進出なども起きつつあり、名古屋を取り巻く地域の発展や変化を受け止める機能が名古屋には必要である。例えば、外資系企業の進出においては、インターナショナルスクールといった国際的な教育機関や国際化に対応した病院などが必要となる。また、トヨタ自動車の国際部が名古屋に移転するが、名古屋には会議場やホテル、モーターショーを行うコンベンションが足りない。受け皿となる施設が充実すればさらに相乗効果が期待できる。
  • 広域連携においては、交通基盤による高速性や快適性の確保が重要である。高度成長による経済発展において、高い所得、長い自由時間をもたらしたのは新幹線など交通手段の発達による移動の高速性や快適性の向上によるものである。
  • 当地域においては、新幹線の開通は、人々の往来や経済活動を活発化させ、閉鎖的な社会を活動の拠点に変える効果をもたらした。その反面、発達した交通手段によるストロー効果により、企業や人材の首都圏や関西への流出も起きた。この地域が発展するためには、広域的な交通網の整備に加えて、「当地域が国内外に対して売り込んでいけるものは何か」ということをはっきりと意識して、広域的に人々を集める仕掛けを考える必要がある。

○松尾委員
  • 水谷委員の発言にあるとおり、民のための基盤整備を推し進めることは非常に大切だ。思い切った優遇策が必要である。これからは一層選択と集中の時代を迎える。その中で、何を優先し、何に重点をおいて実行すべきか、はっきり見定めていく必要がある。
  • 通常、社会資本を考える際の時間的なスパンは、短期は20年、中期は40〜50年、長期は100年を意味する。現在から2008年までの期間は、短期というよりも超短期的なスパンであるため、工程表のように具体的なロードマップを示す必要がある。ロードマップを示す際には、具体的な成功例を示しながら、今できることを具体的に明らかにしていくべきではないか。
  • 広域的に地域づくりを考える場合、拠点都市機能の特性を強化して、それぞれの特徴を特化することが求められる。また、余力があるうちに拠点都市間を結ぶ幹線インフラを整備しておくことが重要である。

○箕浦委員
  • 最近「名古屋の経済は元気である」と言われるようになり、地域外の方々からそういわれると、地元の人間もなんとなく楽観的な風潮に流されてしまっている。数年前までは、ポスト2005の議論がいろいろなされていたように思うが、具体的な方向性を見ないまま、危機感が希薄化している。まるでバブル全盛の頃に浮かれていた当時の様相に似ている。
  • 現在、名古屋が好調なため、流通や金融も外から入って名古屋に集まってきているが、街中の商店、地元経済界、地元の流通・金融は地盤沈下しているのではないかという懸念がある。
  • 名古屋は地元の資本が温存されてきたという特徴を持っていたが、福岡や札幌などのように外部の資本に押されて地元の経済界が衰退する恐れがある。名古屋の流通・金融の動向によって、地方都市とのつながりも変わる可能性がある。
  • 大名古屋ビルの地価上昇率が日本1位と報道されているが、これもJR東海とトヨタという一部の企業が引っ張っているおかげである。名古屋は本当に強いのか、今後も強さを持続していけるのかを真剣に考え、空港・万博の後、この地域がどうなるのか地に足をつけて議論する必要がある。
  • 中部の産業はものづくり一辺倒であることに懸念がある。ものづくりは基盤産業として残るが、今、好調な自動車産業に依存するだけでなく、ものづくりや自動車に代わる新しい産業を育成していく必要がある。
  • 成熟社会へ向かう中で、観光はニーズが高まる分野である。生活のしやすさや、他の地域への行きやすさなど地元住民の視点や、産業としての観光も重点なテーマだ。

○小笠原委員
  • 提言、政策を考える上では、少子高齢化、財政、地球規模での国際競争を基本に据えるべき。
  • 産業競争力を考える上では、個々の小さな取り組みだけでは効果がない。産業クラスターや低未利用地や既存資源を有効活用していくとともに、規模の経済性を踏まえ、地域間の連携と重点特化した産業施策が求められる。
  • 企業がこの地域をどう評価したかということも大切だが、何に不満を持っているか、企業のニーズをリサーチする必要がある。
  • 海外からの対内投資を呼び込むためには、様々な分野の教育や医療など異業種交流や地域連携が求められる。
  • 観光においては、「学び」の要素が重要で、本物を見たい、知りたいという観光客のニーズに対して、レベルの高い観光を提供する取り組みが求められる。例えば、来訪者に対する質の高いおもてなしなども重要な要素であるが、地域に暮らす人々が、自分たちの地域のよさを十分に理解していることが前提になくては、本当の意味でのおもてなしはできない。

○谷岡委員
  • 中部地方は、山や川、海など自然に恵まれ、素材として優れているが、東京、大阪、神戸、札幌、高山などに比べて、名古屋は魅力が弱く、人々を惹きつける「おしゃれ」というセンスが不足している。
  • 「おしゃれであるか否か」のセンスは感度の問題である。中部地方は、魚など食べ物の素材は素晴らしいが、それを魅力的にみせるセンスがない。それに対して、大阪や京都は、魚を引き立てる薬味や、皿の盛り方、飾り方など美味しく見せるセンスを持っているため、人々を惹きつけている。
  • センスを磨かないと美しい国土も生まれない。かつて江戸時代の日本には美しい街並みや景観を築きあげる国土マインドがあった。そのような美に対するセンスを持った人づくりを国土づくりの一環として取り組むべきではないか。文部省や環境省は美しい国土づくりなど考えていない。せめて国交省においては、地域マインド、国土マインドを持つ人を育てることを考えていかないといけない。
  • 誰でも幼児期には、砂遊びをして「土木ごっこ」をしていたはずである。これがまさに土木の原点。けれども、小学校、中学校になるといつしか原点から遠ざかってしまう。自分たちで作業をしたことがないから、なんでも行政に頼る、苦情を言う、批評するという国民が生まれてしまう。もっと国民が参加させる、物差しを持たせる工夫が必要だ。
  • 道端など子供が自由に遊び回れる場所、たまり場とわれるコミュニケーションの場が失われている。子供が育つための場として、必要な機能として捉え、国土づくりの一環として進める必要がある。

○中村委員
  • 名古屋は地下鉄も発達し、道路も広いのにどうして路上駐車が多いのか。名古屋のホームレスは2,000人を超えているという。万博の開催に向けて、これらの対策が必要ではないか。万博では海外からの観光客も多く訪れるため、無策なままでは名古屋の恥が、そのまま日本の恥となってしまう。
  • 経済的な富の追求だけでは地域の人々は幸せを実感できない。「ゆとり」のような精神的な豊かさを考えていくことが重要ではないか。そういう意味で、地域のアメニティ(快適性)について、国、県、市町村が一体となって取り組むべきである。
  • 中部地方には、アジアの人々が興味を持つ温泉地、富士山、先端的なロボット工場等々の観光資源が点在している。万博を訪れた際にいかにこれらの観光資源を見てもらい、よい印象を持ち帰ってもらうかが今後につながる。周遊ルートの整備など観光戦略として重要である。

○東委員
  • 中部においてビッグプロジェクトがあるのは、中部地方全体の活力になる。
  • 美しい川、地形など中部地方の特徴、地域のよさを発信していくことが必要であるが、中部の中でも、地域間の情報がうまく交換されておらず、情報が共有されていない。他地域との交流の中からお互いの個性とは何かということがわかってくる。他を知らないと自分たちの魅力を磨くことはできない。
  • インフラを整備する際においても、地域の個性や価値を守り育てていくことが必要であり、地域マネジメントが求められる。その役割を整備局が中心的に担うべきではないか。大局的な視点から広域的に連携を取って施策を進めていってもらいたい。
  • 観光においては、美しさと快適性が重要である。地元で暮らす人々には日常的な快適性が重要であり、来訪者には、非日常的な魅力や快適性が求められる。これを踏まえながら、各地域が個性を創出していければよい。
  • 地域づくりでは、ハード整備だけでなく、人と人とのつながり、コミュニケーションの強さが重要だ。市民同士が連携を取ることができるように情報交流のインフラや施策があるとよい。

○水尾委員
  • 中部地方では、都市機能の充実や豊かな自然環境の保全、快適な生活環境の形成といったことが求められるが、東京や関西とは違う発展の仕方を目指すべきであり、東京や関西と同じ尺度で量ってはいけない。
  • 産業施策や観光施策は、具体的な提案が必要で、地域の人にとってわかりやすく、説得力のあるものとして提言していく必要がある。
  • ビジョンの目指すべき方向X「中部の豊かな自然環境から地域づくり、観光振興」では、東海北陸自動車道を活かして北陸地方との連携が重要だ。中部地方も北陸地方も観光のポテンシャルは高いので、圏域を超えて相互に協力していけば相乗効果が生まれるのではないか。

○須田委員
  • 新幹線の技術的な進歩による高速化がまもなくなされようとしている。また、ソフト面における様々な改善策によってスピードアップが図られ、時間短縮が可能となる。さらにダイヤの改善も行えば、東京−大阪間は2時間ちょっととなり実感として時間距離がかなり短くなる。そういう点からも、人々の活動圏域はますます広域化するであろう。
  • 産業、観光、2つを結ぶものは産業観光である。万博を契機に産業観光の輪を広げ、積極的に人の呼び込みを行うべきである。

○事務局(村田中部地方整備局長)
  • 「テイクオフ中部2005」で捉えているスパンは、「まんなかビジョン」のプロジェクトマップに示した事業の計画期間である2008年までを短期、「まんなかビジョン」が見定めている10〜20年先の2020年頃までを中期として捉えている。また、2020年以降は、ポイントであって、まんなかビジョンのフォローアップとして位置づけており、長期的な視点から中部地方の中長期的な発展戦略を構築することを今回はお願いしたい。

○須田委員(座長)
  • 各委員の発言を総括すると以下のように整理できるかと思う。


    【産業】
    • バランスの取れた産業構造を形成していく必要性がある。好調なものづくりに依存しすぎることなく、金融・流通など地元の経済界・産業界の足腰を強くすること、次世代を担う新産業の育成も重要
    • 産業クラスターを踏まえた地域産業の振興や既存資源の有効活用や外貨導入を念頭においた施策が求められる
    【観光】
    • 成熟社会に向けて、ゆとりのある社会を形成する必要性がある
    • 観光ポテンシャルの高い中部と北陸とが連携すべきである
    • 観光における学びの要素が重要であり、当地域における産業集積と観光を結びつけた産業観光などを積極的に推し進めるべきである
    • 地域間の情報共有によって、それぞれ自分たちの地域の魅力や特徴を十分に理解することが重要である
    • 美しい国土の形成に向けて、正しい国土マインドを持った人材の育成が必要である
    【まちづくり・地域づくり】
    • 大局的に地域づくりのマネジメントを担う機関が必要である。
    • 東京や関西とは違う中部独自の地域づくりを進めるべきである。
    • 名古屋の拠点性を高める都市機能の強化が必要である。
    • 各拠点都市の特化と、拠点都市間を結ぶネットワークの整備が必要である。
    • 広域的な交通網の高速性・快適性を高めることが重要である。
    【その他】
    • ポスト万博における課題について真剣に考えるべきである。
    • 名古屋地域は本当に強いのか、再度検証しておく必要がある。
    • 地域づくりの指針として具体的な成功事例を示すべきである。


3.閉会
(1)閉会あいさつ

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