まんなかビジョン
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議事要旨

第6回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨

日 時  平成15年6月27日(金)
   15:00〜17:00
場 所  アイリス愛知2階

  1. 開会

    ○清治中部地方整備局長挨拶

  2. 懇談会

    (1) 「まんなかビジョン」について
      事務局より「まんなかビジョン」について説明
    (2) 社会資本整備重点計画(素案)について
      事務局より「社会資本整備重点計画(素案)」について説明

    (1)、(2)に関する意見・質問

    ○須田委員
    • 「まんなかビジョン」の裏表紙に国土交通広域連携中部会議フォローアップ会議ということで岐阜、静岡、愛知、三重の4つの県が書いてある。今後、「中部」というときには全てこの4県を「中部」というのか。例えば、北陸は別になるのか、長野県はどう扱うのか。あるいは色々な「中部」のくくり方があり得るのか教えて頂きたい。

    ○柳川企画部長
    • 「中部」という概念はおっしゃるとおりいろんな考え方がある。今回、このビジョンをまとめるにあたっては、4県1市のご参加をいただいたものであり、必ずしもこれだけを「中部」と決めつけているわけではない。

    ○須田委員
    • 社会資本整備重点計画に書かれている中部ブロックは、必ずしも「まんなかビジョン」の4県とは関係がないと言うことか。重点計画でいう「中部」とは何を指すのか。

    ○柳川企画部長
    • その点については内閣で明確な整理がついていない。これからしっかりと整理していきたい。

    ○須田委員
    • アウトカムという数的指標が出ているのはいいことであるが、ベースになる統計の取り方は県によって全く異なるものもある。指標の前提をはっきりさせる必要がある。

    ○桑田委員
    • 2005年8月に岐阜県長良川で世界ボート選手権がある。これはアジアで始めて開催する大会であり、55カ国が集まる。これに向けて現在整備を進めており、せっかくの機会でもあるのでぜひこれも「まんなかビジョン」に入れて頂きたい。

    ○西尾委員
    • 社会資本整備重点計画で言う社会資本整備とは、主として国土交通に関係することであるが、農業、漁業、工業といった社会資本整備については別個に計画があるのか。

    ○柳川企画部長
    • 社会資本整備ということで、農林水産省所管の海岸事業や国家公安委員会の交通安全施設関係など、いわゆる公共事業関係の内容となっている。もちろん他の分野とも関連づけて進めている。

    ○水谷委員
    • 社会資本整備重点計画に警察庁が入っているということは従来なかったことであり、これは非常に大きな意味を持っている。役所が手を組んで目標に向かっていけば、非常に効果は上がる。ぜひ連携しながらやって頂きたい。

    ○柳川企画部長
    • 社会資本整備重点計画については、これまで単独の長期計画が16本あった。今回、そのうち国土交通省に関連する9本の計画を一本化した。そのなかで、国家公安委員会と国土交通省の計画が一緒になった「交通安全対策5ヶ年計画」が入っている。

    ○池田企画調整官
    • 素案にもあるように、重点的な施策項目として道路政策と取り締まり政策を連携するなど、ハードとソフト施策を合わせて徹底的に行っていこうとしている。

    (3) 「今年度の懇談会の進め方について
      事務局より「今年度の懇談会の進め方」について説明
    (4) 基調発言『100年先の中部を見据えた社会資本整備のあり方』について

    −松尾委員による基調発言−

    • 社会の根幹を支えている社会資本について、3世代先を見据えた長期スパンで考えなくてはならない。予測は難しいが、知恵を結集してビジョンを描いて、100年先を見据えた長期ビジョン・グランドデザインを仕立てるべきである。

    • 100年先のことを考えるのは難しいので、20年ごとに点検・評価をして、見直しができるような進化性を持たせるとよい。100年という長期目標を持たなくてはいけないが、短いスパンを考えることも重要。社会資本にとっては10,20年が短期計画にあたり、40〜50年が中期計画にあたると考えてよい。

    • 社会資本というのは地球環境と同じく、3世代、4世代先の人たちと価値観を共有しなくてはならない。土木が関連するような社会資本には可逆性がないことを念頭に置く必要がある。

    • 現在のコストパフォーマンスだけでは物事が考えられないのが建設・社会資本整備の工学である。「技術=スピード」ではなく、世代を超えた技術であるということを認識しなくてはいけない。

    • 社会資本とは文明であり、これを整備していくに当たっては「文明の根幹に係わっている」、「その文明を担っていく」という気概や先見性・幅広い教養を持った優秀な人材を育成する必要がある。3世代、4世代先という、自らが既に存在しない先のことを考えるという自覚、すなわち「死すべき人間」の自覚を持つ人が育っていく必要がある。

    • 現在は冷戦構造が崩壊し、政治・経済・産業構造、あらゆる分野でパラダイムの再変換が始まっている。これからの時代こそ改めて「土木の時代、建築の時代」であると考える。我が国は敗戦後、急速に社会資本を立ち上げ、それら戦後の社会資本は現在同時に劣化が始まっている。今後の社会資本整備においてはこれまでの「量」に代わり「質」が重視され、余力のあるうちに進める必要がある。

    • 日本は何もかもが縮小傾向にあり、急速な減少基調にある。100年先には中位推計で数千万人くらいになり、経済活動を活性化するためにはどうしていけばよいか、そのための社会資本をどうするかという問題が当然出てくる。

    • その際にたくさんの外国人に入ってもらうのか、そうなったときにわれわれが持っているカルチャーは整合するのかという、「未知なる国際化」という問題も重要になってくる。

    • 人々の価値観は変わっていくであろう。物質的な豊かさから安全・安心を保証する社会資本・環境が重要となってくる。

    • 地方分権を推進し、民間の活力を上げて行かなくてはいかない。公務員の姿勢も問われている。

    • 将来の国づくり・まちづくりにおいては、コンパクトな拠点形成が必要。拠点間を結ぶインフラ整備と重要な社会資本の共有が求められる。

    • 重点投資と施策の優先順位が重要となってくる。時間を念頭に置いた重点投資が重要になる。同時に劣化する社会資本への対応と社会的合意・ユーザーの視点が必要である。その際、考えるべきことは、やはり3,4世代先のことであり、これを市民に分かってもらうためには、啓発ということも必要となる。

    • 専門家は専門的知識は持っているが、地域の情報をほとんど持っていない。これからは使う人が生きていく力、生きていく方法を自分自身で考えていくことが必要。

    • プランナー、行政にはリーダーシップが必要、リーダーシップとは自分の考えを相手に押しつけることではなく、人々の考えを「絵」にしていくことである。


    (5) 自由討議

    ○水谷委員
    • 松尾委員の意見に全面的に賛成である。しかし、現実を見ると全く逆で、短期的な視点が増えてきており、企業をみてもより短いスパンが重要になってきている。おそらくこれは続くであろう。いつの間にか「自分にとってプラスであれば賛成」、「自分にとってマイナスであれば反対」というような恥ずかしい日本人が増えてきた。そうあるべきではなく、将来のためにプラスかマイナスかを判断基準にするべき。
    • われわれが中部の将来を考えるとき、松尾委員が述べた理念を大きく打ち出していくべきである。そうでなければ、現在の実勢を反映して目先の利益が重視されてしまうであろう。


    ○須田委員
    • 現在我々が使っている交通インフラのほとんどの部分が今から100年前に出来ていた。私どもはこれから100年先に何を残すのか、何を残すべきなのか、今それを考えなくてはいけない時代に来ている。
    • その際、一番の根本となるのは100年先の人口をどのように考えるかである。100年先の人口は下限の人口推計で6000万人という数字があるが、これは現在人口の半分である。これで社会は形成できるのか、将来の人口を予測としてではなく、むしろ「将来の人口はこうあるべきだ」と考えるべきではないか。100年後の最適の理想人口を念頭において、100年後に残すべきインフラをつくるべきではないか。
    • 人口は人為的に増減できる。どれだけの人口が理想かという指標があれば、最適な人口をつくり出すことはそれほど難しいことではない。私たちがいまやるべきことは、人口の推計のみならず人口の最適目標をつくり、それに向かって100年後のインフラをつくらなくてはいけない。

    ○奥野委員
    • 40,50年前の目標理念は「国土の均衡ある発展」であった。これは半世紀に渡って各時代の解釈に合わせて役割を果たしてきたが、いまや「国土の均衡ある発展」という言葉はひとつの理念としてほとんど意味をなさなくなってきている。次の40,50年先の理念を設定するのは難しいと感じる。
    • 3,4世代先のことを考える国民を育てるべきであるということは、そのとおりであると感じる。社会資本というものは最終的には国民・住民のウェルフェアによって評価するものであり、住民の意見を聞くのは重要である。だからといって住民の意見を聞いていればいいかというそうではない。なぜなら一般の住民は3,4世代先のことや、地理的に遠くのことまではなかなか考えが及ばないからである。長期的視野や広い視野でものごとを考えられる人材を育成しなくてはならない。

    ○中村委員
    • 100年先を予想するのは難しい。20年後に成人する中国人は1,500万人と言われている中で、日本においてこのまま人口が減っていったときにどういう均衡でバランスをとっていくかという問題がある。また、エネルギーや技術革新の問題もあるが、科学技術の発達により人間の心が失われていくことがもっとも問題である。最終的には文明を築くための人材の養成が重要となる。それによって100年先は無理でも20,30,50年先は読めるのではないか。

    ○箕浦委員
    • 松尾委員が述べたとおり、社会資本については100年単位の長期的ビジョンで見ていくことが大事である。例えば100年後には道路がどうなっているか。ヨーロッパでは馬車時代につくられた石畳の道路がいまでも機能している。一方で、使われなくなった道路もたくさんある。その間にどういった変化があったか、ソフトとか技術の変化をどう読んでいくかがひとつのポイントである。
    • 100年先を考えるとき、我々は100年前と比べて類推してしまう。例えば企業の寿命を考えると、新聞業界では創業100年を越える新聞社が非常にたくさんある。しかし、新聞業界が長期的視点を持っていたから現在まで残ったかというとそうではない。100年先の社会は経験からでは類推できない。

    ○桑田委員
    • 長いスパンを考えるとき、社会の基本となるのは人口である。将来の適正な人口規模を徹底的に考えて対策を講じていかないと大変なことになる。そしてそのための人材育成が欠かせない。
    • 現在は、過去100年間続いた中央集権が崩壊しようとしており、これからは地方分権が一層進むであろう。地方の中で自らが生きる方策を定める時代になってきている。

    ○谷岡委員
    • 社会資本重点計画のなかで、アウトカム目標という具体的な数値目標が出されており感銘を受けた。
    • 地域の声として人道や自転車道の整備などが求められていたが、今の案には盛り込まれていないものがある。厳しい予算のなかで、今後新しく加えていくべきものをどこかに盛り込めるように担保する必要があるのではないか。
    • 地方づくりのための、人材づくり・人づくりをどうしていくかということが一番大事である。高等教育に地方がもっと係わるべきである。
    • 100年先のことを考えるとき、予測不可能な変化に対応し得るように余白を大きくとっておくということもまた見識である。全て埋め尽くしてしまうのではなく、「余白があって当然」という考え方にスイッチをしていかないと、100年という長さの計画を行うことは不可能である。
    • 現在のアンバランスをどう解消していくか。今回のような会議における発言者・参加者の男女比率や世代構成などを考える必要がある。女性や次世代を担う20代や30代の若者の意見などをあまり聞いていないのではないか。
    • 人材育成と言うことに関しては、これからはリーダーシップというよりファシリテーター、仲介者、つなぐ人の養成を真剣に考える必要がある。

    ○渋谷委員
    • PDCAサイクルのように、ビジョンはつくるだけではなく、行動してチェックしながら政策を実現していくことが大切である。
    • インフラは基盤であり、そのうえにソフトなりハードなりが乗って、いかに有機的に機能を発揮するかというかが大事である。また、いかにうまく使われるかということでは、ユーザーの視点が大事である。
    • 観光振興についてはいかに情報発信していくかということ以外にも、いかに「売り」につながるか、インフラがうまく活用されるかということが非常に重要である。
    • この地域は水が綺麗で緑が豊かである。そういったものをうまく観光資源として利用できないだろうか。

    ○東委員
    • 対話と共同の作業の成果と言うことで多くの地域の方々と意見を交換し、意見を聞いてビジョン作成したのは非常によかったことと感じている。
    • 地域の活動には人材の育成が大事である。
    • 新しい公共のあり方を考える必要がある。次の数年間における新しい社会資本整備のため、住民と行政のお互いの体質改善をしていかなくてはいけないし、パートナーシップのあり方を培う必要がある。
    • 地域それぞれの魅力ある個性は地域の美しさにつながってくる。社会資本重点計画やまんなかビジョンには「美しさ」というような観点が盛り込まれるとよい。
    • 女性が子供を産みにくい環境になっているのではないか、子育てしやすい環境、美しく暮らしやすい環境づくりも大切である。

    ○平山中部運輸局長
    • 「国土の均衡ある発展」というキャッチフレーズは中央一極集中の姿であった。日本の人口が減り、経済活動が鈍化するなどパラダイムが変化し、財源が減ってくると集中と選択の時代に入ってくる。各省庁間で計画の優劣をつけることは難しく、地方において住民の視点によって選んでもらおうというのが現在の流れである。
    • 「まんなかビジョン」としてブロックの中での方向性を打ち出しているが、その中で我々は総合行政を展開している地方自治体に対して、住民の視点で政策を判断してもらうことを期待していた。しかし、地域ごとのエゴがぶつかりあって、自治体同士の調整がつかないといった問題が生じてしまった。
    • 日本全体の利益を考え地方において何を優先していくか判断していくために、それぞれの地域のしがらみから切り離された有識者の皆様に優先順位あるいは選択の方向性を示して欲しいと考えている。これからもよろしくお願いしたい。

    ○清治中部地方整備局長
    • 中部としてのエリアを便宜上区切っているが、色々な問題があるのでこれから調整を行っていきたい。また前回の懇談会において須田委員から「中部がどうなれば首都圏や近畿圏がどうなるか」という質問が出たが、この質問に対する回答も含めて、今後ともビジョンを大切に育て利用していきたいと考えているのでよろしくお願いしたい。

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