まんなかビジョン
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議事要旨

第5回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨

日時  平成15年2月27日(木)
   15:00〜17:30
場所  名古屋銀行協会5F大ホール


1. 開会
  ○中部地方整備局長挨拶(清治局長)
   
2. 懇談会
 
(1) 第4回懇談会の提言要旨
  事務局より「資料−1」について説明
(2) 基調発言テーマ:「地域・安全・産業」
  (『安全・安心の確保』、『まちづくりと住民参加』、『モノづくりの国際競争力』など)
   
  −桑田委員による基調発言−
 
地方行政を取り巻く情勢として、地方分権の問題があり市町村合併という大きな流れがある。地方自治の時代が本格的に到来してくるわけである。地方分権に伴い、国と地方自治体が対等であるという新しい関係が明確化されてきている。
中央依存の体質も変わらざるを得ない現状でもある。これまでのいわゆる中央集権体制は明治維新後確立されたが、欧米諸国に追いつけ追い越せということで、経済大国・工業大国が急がれ、全国一斉に一律に実施してきた実態があり、それはそれで大きな効果があった。その後、地方も力がつき、地方独自の行政を進めるという声も大きくなってきた。中央集権体制の使命が終わったといえる。これから地方は、自分たちで考え、汗をかいて、自立してやっていかなければならない。自主自立の地域分権システムを確立するには財源問題を避けて通れないため、国は、単に補助金の廃止や縮小ではなく自主自立のための財源をどのように配分していくかということを確立すべきである。
また、市町村合併も進んでいる。岐阜県を見ると、県内の市町村の数は99あるが、これが合併により約20市町村以下になろうかと思う。あくまでも合併は強制されるものではないが、自立的に地域行政をやっていこうとすると合併は避けて通れない。
行政を進めるにあたり、これまで県民は、スポーツに例えると、スタンドで観戦しているサポーターであった。厳しい情勢の中では、県民もグランドに降りて一緒にプレイする協働型の社会を作り上げることが重要だ。
岐阜県では、「夢おこし県政」を実施してきた。これによって、県民から多くの声を得ることが出来た。この効果は3つあり、全体として県民の望む方向を知ることができること、アイデアが多く集まること、県民の間に参加意識が高まることである。現在の制度では、間接民主制をとっているので、決定は首長・議会がするわけで、責任をとる形ではあるが、これからは、直接民主制も制度の中に取り入れて、県民に情報を徹底的に共有して、県民と行政で協働社会を築いていく社会に向かわざるを得ない。大きな流れの中で、ガラス張りの税の使い道を考え、お互いにプレイしていくことが必要である。
   
  −東委員による基調発言−
 
清水港の景観づくりについては、10年前から取り組んできた。住民の意向を聞くためのアンケート調査、企業の協力を得るためのアンケート調査を実施して、皆が協力して自然景観と調和する美しい人工景観を形成するための計画プログラムを作った。パンフレットの表紙にある煙突は、市民2万5千世帯の同意書、企業から寄せられた1億3千万円というお金、市による景観条例の設定とったように住民・企業・行政のパートナーシップによって塗り替えられたものである。
参画型の地域づくりを進める上では、様々な人が参加できる場をたくさん設けることが何よりも大切であり、住民・企業・行政が対等な関係を結びながら、互いに意見を出し合って一つの方向を見出していくことが重要ではないだろうか。
清水港の取り組みを通して、美しさということが地域づくりの源となるのではないかということを実感している。「美しさ」は嗜好の問題であると言われる、なかなか評価しにくいものであるが、「心の豊かさ」や「満足度」が重視される時代になって、自分たちの地域のアイデンティティを考えると、「美しさ」はわかりやすい指標の一つになるのではないか。
中部地域は、伊勢湾、鳥羽・志摩の景勝地、伊豆など美しい自然景観に恵まれた地域である。地域の魅力づくりを考えた場合、美しい自然景観と調和した人工景観をいかに整えていくかということは、課題であるが、地域の活力をもたらすものでもあると感じている。景観だけでなく、歴史・文化といった地域の個性を見出し、地域の顔として、アイデンティティの持てるものに結びつけることが大切だ。
名古屋港は、「スーパー中枢港湾」として物流・産業に特化して国際競争力の中で展開していくと思うが、他の港については、従来の産業港としての機能を失っていくと考えられる。このような港については、産業の空間としての港から都市と一体となった地域の拠点へ転換を図り、いかに港を活用していくかを考えていく必要がある。全国津々浦々、それぞれの港を魅力あるものにしていくことが大切ではないかと思う。
フランスのルアーブルでは、プロジェクトの一環として、開発して環境に負荷を与えた分だけ、多額のお金を投じて環境修復をおこなっている。オランダのロッテルダムなども同様で、国際的な競争にある港であっても、EUが定める厳しい環境基準に則り、産業のために破壊してしまった環境に対してはきちんと責任を果たしている。一方、ベトナムの港には日本企業が進出した工業団地が広がり、幅広い道路が通って、まるで数十年前の日本の港のようであった。現地における環境問題について尋ねてみたところ、きちんとした答えを聞くことができなかった。海外進出する日本企業も、現地の環境問題も十分に考えながら経済活動をおこなう必要があり、国際社会の中で、先進国としての振る舞いが問われているのではないだろうか。
これからの社会資本整備は後世に残していくものとして、市民に喜ばれるもの、耐久性のあるものをつくり、美しい環境づくりにも取り組んでいただきたい。
   
  −渡辺委員による基調発言−
 
モノづくりをしていく先にどんな社会が到来するかということを述べると、1つ目は、環境と調和し、持続ある成長を目指す「再生・循環型社会」がある。2つ目は、「IT社会」の到来で、高度情報化社会の中でITが進化し、安心・安全・快適に暮らせる社会が生まれる。3つ目は、「成熟した人間社会」の到来で、グローバル化が進展する中で、国籍や歴史・文化、年齢、性別を越えて尊重し合う国際社会がある。そうした中で、我々はモノづくりで世界と競争していく。日本の中でどうあるべきかというより、世界の中での日本、あるいは中部としてどうあるべきかという視点で考えていかなければならない。
大きなテーマとして考えているのが、「技術開発力の問題」、「コスト競争力の問題」、それらを実現させる「人材の育成」。この3つが中部地区から生まれ、中部が世界のリーダーになることが大変重要である。そのために何をなすべきかを考えるべきである。
技術開発力には、燃料電池やハイブリットが安くできるか。代替燃料をどう探すか。安全予防する技術はどこまでうまれてくるか。情報技術を自動車にどう取り入れるのかという、環境・安全・情報通信という3つの分野の技術開発が重要である。
コスト競争力については、日本の労務費、エネルギー費、材料費などはどれも安くなく、高コスト構造になっている。コスト競争力をどういう形でつけられるか考えていく必要がある。それに対しては、日本の知恵・工夫がこれからは重要である。ムダ・ムラ・ムリをいかに外していくか。いかにいいものをより安く作るかが今以上に求められている。1つ目は、ムダ・ムラ・ムリを無くすために、思い切った設計革命や技術革命を起こす。2つ目は、いままでのやり方でなく作り方を変えていくなどの生産革命を起こす。3つ目は、物流の面での革命、4つ目は、固定費を削減する革命を起こす。やることはまだまだある。
そのような革命を起こすために人材の育成が大変重要となってくる。日本の腕、知恵をもっと磨みがいていくための人材育成がこれから重要だ。モノづくりのスキルと情熱をしっかりと伝えていくこと、グローバルに通用する人材の育成、変化や危機を察知できる感覚を持ってマネジメントして仕事を地道に実践できる人材を教育の中で形成していくことが必要だ。科学技術創造立国として、国は明確なビジョンを出すべき。資源の乏しい日本が世界と競争していくためにはモノづくりの技術技能とそれを支える人材の育成が必要である。
中部地域は、2004年にITSの国際会議、2005年に愛・地球博がある。これがひとつの大きなチャンスではないか。こういう場で中部の技術力をきちんと示していくことが大事。その時に産官学が一体となってこのことを実証していくことが必要。それを生かすために国として引っ張っていってほしい。
   
 
(3) 「まんなかビジョン」及び社会資本整備重点計画法案について
  事務局より「資料−2、3」について説明
(4) 自由討議
  ○須田委員
 
ビジョンについて、必要なことは書いてある。メリハリがなくアクセントを感じない。どこに一番ポイントがあるかはっきりしない。交通基盤、都市基盤、生活基盤、環境基盤、災害対策などテーマを横軸に7つの方向を縦軸に事業を整理したようなものを付属資料としてまとめてはどうか。
なぜ「まんなか」なのか。まんなかに問題があるとすれば、まんなかを良くすれば、東京や大阪まで波及するということであろうと思う。仮に中部のビジョンが全部できたら、全国に対してどういうような経済波及効果を与えるのだろうか。そういうなものを定量的な分析、産業連関分析的に波及効果を分析して、中部から問題提起する。全国の経済をどれだけ活性化させるかを考えるとものすごい迫力があると思う。「まんなか」を良くすることが、いかに全国に波及効果が大きいかということをつくっていただくとよい。
   
  ○水谷委員
 
国土計画というのは50年、100年先を目指すべきもの。その場合に何を前提にするか。10〜20年後はどのくらい悲惨になるか。それを前提にするのか、しないのかで計画は異なってくる。地方や国の様子からするととてもではないが生やさしくない。国民の生活水準は相当下がり、著しく経済は縮小する。20年後には悪性のインフレが起こる可能性がある。
我が国にとっては、1にも2にもモノづくりが大事。その中心となるのが中部。次に安全性という問題が重要となってくる。世界を見れば今のような安全性は保てない。
あらゆる面において重点化が必要であり、かなりの部分であきらめなければいけない。このような前提のもとで、理念と実現に向けた具体的な施策をつくっていくべきである。
   
  ○奥野委員
 
地方分権や市町村合併は当然の方向。何をやるかが問題。地方分権により、地域間の競争格差は出てくる。地方交付金をさらに厳しく見ると格差が出てくる。市町村合併は、何を意義に求めるのか。社会資本の有効利活用、教育・福祉の有効な利用、効率的なサービスの提供があると思われる。
伸びない社会に結果の公平を求めるのは無理な話。小さな自治体同士が連携して新しい価値をつくっていく場合、「連携の経済」のような実例が積み重なっていけば意味がでてくるだろう。
ビジョンの中に中心市街地の問題があるが、中心市街地に商業施設を再度入れればよいというものではない。むしろ都心居住を中心に据えるべきではないか。
   
  ○佐々木委員
 
モノづくりの国際競争力については、我が国の高コスト構造に対してどのように考えていくかが課題であり、規制緩和が大きな対策の一つであろう。その一つの方策が構造改革特区であり、モノづくりに関してもきちんと進めていくべき。
反対に、景観や環境デザインといったところは、規制を強化する形でやることが重要。
まんなかビジョンは網羅的であるがよくできている。事後、タイムスケジュールを入れるなどしてほしい。
中部地域においては、農業も重要な問題で、この辺りをどうしていくかの議論が必要ではなかったか。
   
  ○谷岡委員
 
このビジョンは市民語で書かれておりわかりやすかった。市民の声を拾い上げているので、問題や課題が浮かびやすくなっている。真剣にPIを進めていることが感じられる。
規制強化の点については、整備されたものがその目的のために確実に使われるような規制強化が必要ではないか。例えば、道路を見ると道路は車が走るためにあるのであって駐車するためにあるわけではない。そういうことに対しての規制強化が必要ではないか。
規制緩和の点では、もっぱら行政は、市民から意見や相談を聞くが、実行するのは行政のみというスタンスになっている。自転車道や人専用の道など、昔は一般の人々が整備をしていた時代があったが、今ではボランティアでそうした活動を行おうとしても行政財産だから駄目とされる場合がある。公序良俗に反しない範囲で市民がもう少し触れるようなものになるといい。
愛知万博でリサイクルやリユースをやっているが、現実にはそうした資材が海外から調達されていたりする。一方で、国内の森の荒廃という現実がある。森を守ることと会場をつくることを一体化し包括してできるようなことを新しい施策として出して欲しい。
   
  ○箕浦委員
 
大変気になることは、まんなかビジョンで「名古屋」以外の都市や地名がでてきていないことだ。名古屋以外の地域はどうなるのか見えてこない。このまんなかビジョンは誰に対してのものか。例えば、政府に対して、あるいは全国に向けてであればいいが、この地域の人に向けて出すということであれば、はっきりしたイメージをもてる人はいないのではないか。高山や四日市などの人たちにとっては、自分の地域がどうなるかということが、関心が高いと思う。
   
  ○桑田委員
 
私も「名古屋」という言葉の多さが気になっている。やはり、農山村との関わり合いが重要になってきている。その点についてもう少しふれてもらうといい。
地方分権が進むと県の概念がなくなっていく方向になると思う。広域的に考えると財政問題を徹底的に解決しないと閉塞状態になる。
また、少子高齢化を解決しないと何もできなくなると危惧する。ビジョンを長いスパンで考える際に、少子高齢化の点について十分な議論が必要。
   
  ○中村委員
 
このビジョンは羅列気味で新聞記事になりにくい状態である。
情報発信に関して、マスメディアの活用の問題がある。中部は情報発信が上手とは言えない。不足している。万博のことについていえば、東京や大阪をはじめとしてほとんど万博のことを知らない。アジアの人も知らない。それが実態。全国に知らしめなければいけないことについては、マスメディアの活用を積極的にやってほしい。
   
  ○松尾委員
 
ビジョンというのであれば、せめて、50年〜100年ぐらい先の視点が必要。10年20年というのはむしろ中期・短期計画ではないだろうか。
10年20年ということであれば、いつまでに何をやるかということを重要度分析も含めて明らかにすべきで、次のステップに入ってこそこのレポートが生きてくる。
   
  ○東委員
 
もっと住民の人たちの声をビジョンに反映できないのか。何を求めどんな将来を見つめていくかが地域の人の生きるエネルギーになる。豊かな生活のためにというよりも整備のためのプログラムになっていると感じる。
静岡の話がない。「名古屋」が中心になっている。これからの産業として「観光」が一つの柱になってくる。観光連携軸によって新しい産業を創出することが、地域の新しい目を磨き上げていくことにもつながる。地域活力を考えたとき、優良な自然環境がある地域であるということも視野に入れていただきたい。
   
  ○渡辺委員
 
ビジョンを達成したときに中部はどのような姿になるのかということが様々な人にとってわかりやすく示せるとよい。
目標実現のためのキーである「役割分担の明確化と推進」「既存の枠組みを超越した連携」ができるかどうかが最大の課題だ。国土交通省だけでは駄目で地域としてどうするかが大変重要だ。
小さなことでもいいのでこのビジョンに書いてあることを早く実現していただきたい。国土交通省だけやるのではなく、いろいろなところと連携してやっていった成功体験を見せていただきたい。
   
  ○西尾座長
 
まんなかビジョンの対象範囲は広く、国土交通省だけで実現できるものではない。他の省庁との連携・役割分担をどうするか検討する必要がある。また、圏域を越えたときにどうするのかといったことも含めて具体化していただきたい。
このビジョンは、いわゆる四全総、五全総の流れを汲むもので社会資本整備重点計画と関連が深い。重点計画が一本化され各分野の5カ年計画がなくなるとすると、各地方自治体は何をどれくらい取り組めばよいのか困惑するのではないか。
空港・港湾に関しては、物流拠点としてハード面は整備されてきている。しかし、物流を動かす商社が名古屋には少ない。空港についても人だけでなく、貨物量の増加が期待される中で、モノを動かす商社機能がこの地域には求められている。
東京の汐留、品川や六本木など高層マンションの建設が相次ぎ、都心回帰の傾向が強まっているが、名古屋においても今後、都心回帰の傾向が強まることが予想され、良質な住環境の整備を促進させる必要がある。
観光という観点では、大規模のテーマパークはハウステンボスなどに見られるように厳しい時代となっている。むしろ、都市のにぎわいを演出する場、市民が街に出かけて楽しめる個々の仕掛けを考えていく必要がある。
過疎地の交通については、採算性の問題からバス路線が廃止されてしまうことが各地で起きている。住民、特に高齢者の日常生活の足としてバスは存続させるべき。過疎地域の交通は行政の仕事として取り組まなくてはいけない。
治水対策に関しては、しっかりやっていただきたい。治水と利水の両方を一緒に考えると運用が難しい面もあるが、大きな河川については、流域委員会をつくって具体的に議論していってはどうか。河川流域ごとに広域計画があれば、上流・下流の問題も解決されていくのではないか。
道路整備に関しては、広域で考え、貨物鉄道を積極的に活用してはどうか。そうすれば高速道路にも余裕ができるのではないか。
中部国際空港のアクセスの問題として、開港すると夏場の海水浴客と相まって混雑が予想される。また、第二東名と知多道路の接続が悪いので、今後の課題として考えていただきたい。
情報公開を徹底して、住民の声を聞く場を設け、繰り返し継続的にやれば、遠回りのようでも、仕事をスムーズに進めることができるのではないだろうか。
トヨタ、中電、JRが学校をつくって人材育成をするという話があるが、このようなすばらしい発想を応援することができるものがあるとよい。
   
3. 閉会
  以上

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