まんなかビジョン
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議事要旨

第3回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨

日時 平成14年10月4日(金)
10:00〜12:00
場所 KKRホテル名古屋 3F芙蓉の間
  

1. 開会
  ○ 局長挨拶(清治局長)
2. 懇談会
 
(1) 第2回懇談会の提言要旨
事務局より「資料−1」について説明
(2) 「モノづくり産業の国際競争力」及び「中部の経済社会の活性化」など
  −奥野委員による基調発言−
  中部は常にリーディング産業が起きてきた。しかし、リーディング産業がいつまでもリーディング産業とは限らない。日本の技術が追いつかれる時間が最近非常に短くなっている。その意味で一歩先、半歩先を行く研究開発が大事であるが、この地域の歴史や文化など、追いつかれないものを創る、自分たちの誇りを持つことが重要だ。例えば、この地域には天下分け目の合戦があり歴史的な史跡が多いが、本当に地元がそれを守り育ててきたか。まちづくりについても同様。名古屋にも有松や主税町など良い街並みがあるが必ずしも活かされていない。
  先日、海外で日本を紹介する雑誌を見たが、名古屋は東京をスケールダウンした街で、訪問するほどでないと紹介されていた。新しいものを創ることは大事で名古屋駅前が特区になったことは評価するが、一方で追いつかれないまちづくりをしていくことが訪問される街を作るうえで大事であり、産業にとっても大事だ。
  インフラのソフト面については、利用コストや使いやすさも大切であるが、既存ストックの活用も重要。これからは広域的な視点での社会資本整備がことに大事となっていくと思う。例えば、高速の交通ネットワークや港湾、空港等は現在の都道府県よりももう少し広い、広域的なところで考えていくことが国際競争力のあるものを作るためには非常に大事である。その際問題となるのはどのように意思決定するかという点。“意思決定”が重要なカギとなろう。中部圏協議会方式が注目されているが、これは各県の計画をバインドしたものであり、陳情型の計画だ。地方も経済があまり伸びない時代では、どの事業を行うか選別をしなければいけない。どのようにして意思決定をするかは、道州制などを睨んでいけば一つの方向性が見えてくると思う。その際の地域ブロックだが、伊勢湾とその水系をひとつのブロックとして考えることができるのではないか。自然、文化を問うていく時代であればこそ、伊勢湾から見た水系というのが一つのブロックになっていくのでないか。

−佐々木委員による基調発言−
  中部経済については、地元産業が堅調であったこと、本社の移転もなかったこと等により、バブル崩壊後も比較的恵まれた状況にあった。一方で、地域の活性化という点については危機意識が弱かった点も否めない。
  今後、将来を考えるうえで考慮すべきファクターとしては、「少子高齢化」「国際化」「財政難」の3つが挙げられる。「少子高齢化」については、2014年には日本の4人に1人が高齢者になると言われていること。「国際化」に関しては、中国等の台頭による産業の空洞化と、中部国際空港開港により当地の国際化が加速すること。「財政難」というのは、借金が先進国の中にあって最悪の状況であること。これらを念頭に置く必要がある。
  中部地域の今後の課題と方向性であるが、一つには「モノづくりのさらなる強化」が必要である。そのためには、「さらなる高付加価値化のための体制整備」、「先端産業の研究開発や生産拠点の他地域からの呼び込み」、「物流コストを削減するための輸送インフラの整備・充実」が必要である。このうち、「さらなる高付加価値化のための体制整備」については、デザイン力、ブランド力を自社内で開発するだけでなく、研究開発拠点の強化により情報交流機能を高度化し、コンテンツの創造力を培って行かねばならない。「先端産業及びそのR&D拠点の他地域からの呼び込み」については、ソフトピアジャパンやクリスタルバレーなどが模索しているように、新しい産業クラスターの創出が継続的な新開発を巻き起こす可能性を有していることに着目すべきである。また、「物流コストを削減するための輸送インフラの整備」については、例えば港湾のコンテナバースの継続的整備や道路交通におけるITの導入が求められよう。
  もう一つは「魅力ある地域づくり」が必要である。これには、「集客産業による地域振興」、「外資の導入等による、国際的アイデアによるサービスの活性化」、「財政制約下での工夫」が求められる。例えば「既存の地域資源を活用した観光振興」については、香嵐渓で有名な足助町には定住人口の130倍もの観光客が1年間に訪れていることに学ぶべきである。「外資の導入等による、国際的アイデアによるサービスの活性化」については、マリオットの進出により名古屋のホテルに喝が入ったことをが好例であるし、空港関連で出されたカジノ構想もアイデアとして評価できる。最後の「財政制約下での工夫」については、例えば都市再生への取り組みやPFIの活用などが今後さらに望まれる。
  以上をまとめると、中部国際空港の開港と万博をハードとすれば、ソフトの充実が重要で、世界から人的資源が集まる工夫、交通の利便性を高める工夫、これまでの自前主義だけでなく外部からの英知導入に向けた工夫が必要。そのためには特に人材が重要で、地元の大学とりわけ社会科学分野の充実が望まれよう。

−鈴木委員による基調発言−
  日本はモノづくり大国と考えていたが、自動車産業でもクレーム隠しが発覚するなど問題がでてきている。これは、技術、技能の低下によるところが大きい。トップが現場を知らないことも原因ではないかと考えている。
  今ものづくりでは、技能を軽視して技術が低下し現場が荒れてしまったという状況にある。教育の問題、産学連携、地域の特色ある大学づくりなど課題も多い。また、情報を集めやすくなったこともあって技術者が机の上でやってしまう、メールでおしまいという状況。情報伝達が便利になり過ぎたため、フェイストゥフェイスが重要性を増している。
  オートバイについては、1960年代、ヨーロッパが280〜290万台生産していた頃、日本は150万台であったが、日本がピークを迎える1981年に日本で741万台となったにもかかわらず、ヨーロッパでは依然280万台を確保していた。ヨーロッパの生産市場を根こそぎ取ったと思っていたが変わらなかった。このように、今の日本はアジアに取られるのではという発想ではなく、どのように高付加価値化していくかを考えていくべき。
  空洞化にうち勝つものづくりには、品質とコストを考えておくことが重要である。また、為替も大きく影響する。常に幅を見て考えておく必要がある。今後は、作業を改善して合理化を進める必要がある。これまでより50%のコスト削減を進める企業まででてきている。20世紀の考え方ではだめで、小手先の改善では対応できない。21世紀に対応するためには、材料、機械、機能まで変えていく必要がある。ものづくりは文化であるから、全てが海外に行くというものではない。企業もその努力をしている。
  国としては教育をどうするかが重要である。少数精鋭としていくことが重要。社会基盤については、陸海空ともに恵まれた環境だと思う。東海地域は全体的に恵まれていることから効率的な利用をしていくことが重要である。

−自由討議−
  桑田委員
  中部はものづくりに特化した地域であり、品質とコストを重視することが重要。
  県市は、試験機関をもっているが、地域に密着した研究機関の集積が必要。
  岐阜県でも岐阜大学と連携を進めているが企業と一体となった研究が重要である。大学と企業との連携のあり方も見直していくべき。
  観光については、外国からの観光客が非常に少ない。韓国よりも少ない。地域資源を活かした体制づくりを進めていくべき。観光は裾の広い産業である。中部地域には見過ごされている観光資源がたくさんあるので、掘り起こす必要がある。
  須田委員
  地域の産業活性化のためには情報発信が重要である。先日、ゾーリンゲンのナイフを買ってきたが日本の物とそんなに変わりはない。しかし、欧米諸国の製品には強烈なブランドイメージがあり、品質は日本製品とそれほど変わらなくても圧倒的に人気がある。トヨタ自動車は車体の後ろに大きく“TOYOTA”のロゴを入れており「世界のトヨタ」というイメージを出している。
  情報を発信して中部のブランドを作っていくべきではないか。例えば、中部の製品には必ず“Made in Chubu Japan”と明記したり、名古屋の“NGY”とロゴを入れるなど、中部印を印象づけてはどうか。
  ヨーロッパの観光案内誌を見ると名古屋は交通の便は良いが観光に行く所ではないといっている雑誌もある。知名度がなさすぎる。情報発信、ブランドづくりが重要である。私の関わっている産業観光も情報発信が重要であるという思いでおこなっている。
  平山局長(中部運輸局)
  製造業は日本の経済成長を支えてきたが、今後もものづくりは日本の経済を支えていくことができるのか、どこまで支えることができるのか教えてほしい。
  奥野委員
  総生産額のうち製造業の占める割合は3〜4割程度であるが、IT関連やサービス業は製品と結びついてはじめて、成長している。ものづくりの広がりの強さが日本を支えていくと考えられる。
  須田委員
  製造業では自動車産業が目立つが、数字のマジックに注意する必要がある。自動車以外の産業を見ると、ものづくりの真実が見えてくる。
  観光産業では、大きなテーマパーク以外は惨憺たる状況だ。
  谷岡委員
  経済の真水とバブルの部分をどう捉えるかが問題ではないか。これまでの経済発展の中で国民を安易に稼ぐ方向に向かわせた部分がある。堅実に働くという意識が希薄になったことが、競争力を低下させてしまった感がある。
  トヨタは自動車を造っているわけではない。デザイン、情報、経営、財務といった各分野の総合力が競争力を産み出している。
  業態に囚われず品質やコストに対する消費者の価値観が変わっていることに産業界は対応できていない。今の若者は「ものがいいから」「安いから」買うのではなく、「好きだから」買うという意識の変化や「環境」、「安全」といったものへの関心が高まっていることを産業界は謙虚に受け止めるべき。
  中村委員
  名古屋はパチンコが有名だが、パチンコはパテントをとらなかったので全国に広まった。バブルの頃はパチンコ産業が自動車産業を凌ぐ程であった。カジノはラスベガスが有名だが、そこでは1人あたり8千円使われている。日本のパチンコは1人あたり1万8千円で、そのお客の多くは、サラリーマンと年金生活者である。これがパチンコ産業を潤している。
  日本は少子高齢化が進み、生産年齢人口の点でもアジア諸国と大きな差がつく。グローバルに考えないと中部のモノづくりの善し悪しを測ることはできない。
  箕浦委員
  自動車企業の多くは、もともとはベンチャー企業である。名古屋自体は昔から中小企業のまち。子供のころは名古屋の町中にも町工場が数多くあった。子ども達は、そういう産業、起業の姿を身近に見て育った。しかし、高度成長期には大企業全盛となり若者は大企業に入って働くという考え方が定着した。
  今後は、中小ベンチャーへの支援を中心に考えていくべき。名古屋は保守的だが、斬新なもの、新進気鋭のものを輩出してきた土地でもある。事業興しについても多くの企業が大企業へ育っている。次の新しい芽を育てる施策、環境、国土づくりを考えていくべき。教育もサポートする必要がある。大学も特色のあるものが多い。官民一体となって中小ベンチャーの育成を進めてほしい。
  松尾委員
  名古屋の地理、気候、産業、人口等を反映したグランドデザインを描くべきだ。私も多くのこのような会議に出席してきたが、なかなかできない。必要性がいわれながら日本にもない、もちろん、中部でも描けない。長期目標をもったグランドデザインが必要である。
  現在の大学の研究室は、産業の現場と大きく離れてしまった。昔は、研究室は現場の近くにあった。私も東名自動車道等に多く係わってきた。なぜ無くなってきたのか考えるべき。研究する場と現場をもっと近づけていくべき。
  名古屋のプレゼンスを高めるようにグランドデザインにしっかり描く必要がある。コアの部分を重視して育成していくべき。何でも平等にではやっていけなくなってきている。また、非コアの部分でも将来的に成長する可能性のあるものは育てていく必要がある。
  清治局長(整備局)
  国土交通省は社会基盤整備を行うことだけが国土交通省の仕事だという考え方から意識転換し、何のための基盤整備なのかということをしっかり考えていきたい。
  関係する他の省庁や各地方の省庁と連携し地域のためにそれぞれが担う役割を確認しあう場を積極的に設けていきたいと考えている。
  谷岡委員
  教育と人づくりいうことになると学校や大学に責任が押しつけられる傾向がある。学校に過大な期待をせず、社会全体が教育を担っているという認識を持つべきである。例えば、優れたデザイン力というのは学校教育だけで養われるものではない。都市の風景や美しい自然といった小さい頃から目にするものから美意識は養われている面が強い。日本人の美意識を育んできた環境が汚されてきていることが問題となっている今、日本人としてのセンスを育む環境づくりをまちづくりとして取り組むべきではないか。
 
(3) その他
○ 「まんなかビジョン」について
事務局より説明(資料ー3及び資料−4)
3. 閉会

以上

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