まんなかビジョン
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議事要旨

第1回 国土交通中部地方有識者懇談会【まんなか懇談会】議事要旨

日時 平成14年5月7日(火)   
10:00〜12:00       
場所 名古屋マリオットアソシアホテル
16階『アイリス』 

1. 挨拶
 
柳川(中部地方整備局)
  ・本日はご多忙の中、ご出席いただき大変ありがたい。
・会に先立ち、中部地方整備局の清治から挨拶をおこなう。
清治(中部地方整備局)
 
本日は連休明けのご多忙の中、多くの方々にご出席いただき大変嬉しく思う。
朝のテレビニュース(NHK)では、本会議が「まんなか懇談会」として紹介されていたが、現時点では、「まんなか懇談会」の中身がはっきり定義されているわけではない。みなさんのご議論の内容によって次第に決まってくるものと思う。この場では、中部の目指すべき方向についてみなさん方に自由に議論していただければと思う。
国土交通省という新しい省庁がスタートして1年半が経過した。地域の方々の意見をくみ取って基盤整備を図っていきたいと考えており、新しい省として特に以下の5つの使命を掲げている。
(1) 国民の生活面、特に個人の生活面を重視。
(2) 産業基盤、国際競争力を持った地域づくり。
(3) 安全・安心に向けた基盤整備。
(特に中部においては地震対策を掲げている。)
(4) 環境への配慮。
 環境を復元・創造していくところまで踏み込む。
(5) 文化・伝統など地域の特徴を大事にした基盤整備。
国土交通省という非常に大きな省庁になることへの批判もあったが、省庁がまとまったことにより、visionのある施策を総合的に進められると考えている。こうした体制の下で、昨年度は、中部の社会資本整備について、中部4県の知事と名古屋市長、中部地方の経済界代表者と扇国土交通大臣による「国土交通中部地方懇談会」を行った。現在、そのフォローアップ会議を実施している。
国土交通省所管の長期計画(5カ年計画)10本のうち8本が平成14年度で期限を迎えるため、これまでの計画を見直し、次年度からの計画をつくっていく必要がある。新しい計画をつくっていく中では、以下の点を重要視しており、長期計画のあり方についてもご示唆いただきたい。
国民の、地域のコンセンサスを得ながら進めていく。
横断的な政策課題に対して統一的な姿勢で臨む。
アウトプット型の計画からアウトカム型の計画へ。
国土交通大臣直々のタスクとして、国の存続をもかける50〜100年に渡る超長期的なグランドデザインについて本省内で検討が始まっている。そのテーブルにこの会議の話も伝えていきたい。
スイスのある研究機関の発表によると、「日本の国際競争力は30位に下落」した。10年前はトップレベルであったが、国際的な社会経済の要請に見合った人材育成ができているかという点で評価が下がっている。
本懇談会では、みなさま方から社会資本のあり方、省のあり方、中部の目指すべき方向についてご示唆いただきたい。また、メンバー間の意見交換も活発にしていただきたい。頂戴するご意見の良い点については、国策に反映させていきたい。また、地域の知的財産として各方面へ活用していけたらと思うのでどうかよろしくお願いする。
柳川(中部地方整備局)
<委員の紹介>
   
2. 中部地方の現状説明
  ○ 奥田(中部地方整備局)
<資料−2参照>
   
3. 懇談会
柳川(中部地方整備局)
・西尾委員が欠席であるので、本日は、松尾委員に座長をお願いしたい。
   
松尾(名古屋大学)
国土交通省は、環境面、安心・安全を考えた上で、社会資本整備を行う重要な役割を担っているが、特に他の機関と大きく異なる点は、その仕事のスパンが非常に長いということだ。100年、200年、2、3代先の納税者も担っているという気構えで取り組んでいって欲しいと思う。
「まんなか懇談会」では、21世紀の中部地域についてその方向性を考えていくということだが、中部地域といっても各機関によってその範囲の捉え方は様々。この懇談会では、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の4県と長野県の南部という日本のまんなかに位置する地域のあり方について考える。
本日は、第1回目であるので、自由に発言いただきたい。その中で出てきたキーワードを事務局側で拾い上げ、整理した上で、次の議論へつなげて欲しい。
   
奥野(名古屋大学)
 
中部の目指すべき方向について、以下の4点、意見を述べる。
(1) 社会資本整備について
道路(高速道路)については、古くから良い計画が立てられており、着実に進めていって欲しい。
環状道路は、生活、産業、環境面から見ても非常に大切である。
名古屋の印象について、他地域の人を対象に実施したアンケート(中部産業活性化センター)の結果によると、「緑の多いまち」という回答があった。この地域は、最近、かなり緑が増えてきているように思う。
関西など名古屋周辺の地域で、名古屋が修学旅行先として注目を浴びているという記事があった。確かに京都にはないような魅力がこの地域にはある。こうした特徴を積極的に売り出していくべき。
(2) 都心部の魅力向上が必要。
名古屋圏の魅力向上については、都心部(名駅〜栄にかけた一帯)の魅力向上が重要。最近は、名古屋駅に集まる人が増加し、人の流れがスムーズとは言えなくなった。この一帯をどのように整備していくかが緊急の課題。
名古屋駅から栄地区へ広小路通などを散策する人も増えてきている。このような流れがもっと高まればと思う。
笹島から吹上に至る若宮大通は、もっと人の集まる空間になると、非常によい公共空間になるのでは。
久屋大通に面した地区は、シンボル的なもの、ソフト的な施策を取り入れ、都市景観を磨き上げていく必要がある。
(3) 社会資本の利活用
公共施設などの社会資本は、どこも均等にフルセットで整備するのではなく、広域で(人口50万人程度をひとつの単位として)相互的な利活用を図ることが重要。そのためアクセスを考えるというのが一つのあり方ではないか。
港湾などについては人口1,000万人を単位にもっと大きなものを整備していく必要がある。
(4) 安心・安全
地震、洪水対策も重要であるが、渇水対策も重要。中部地区は、2〜3年に一度は、渇水問題が起きており、産業にとっても深刻な問題である。
   
筧(日本政策投資銀行)
 
名古屋は日本一の物流港湾を有しており、ものづくりの点でしっかりした土台を持っているという強みがある。一方で、神戸や横浜と比較すると、ハードな(男性的な)面ばかりが強く、ソフト的な(女性的な)魅力が乏しい。この土台を維持しつつ、ソフト的な魅力を向上させることが課題である。
関西では、本社機能の東京移転が進み、深刻な悩みとなっているが、中部地区には製造業を中心に地元志向が強いという特徴がある。しかし、今後、製造業の空洞化に対する危機感がある。空洞化の克服と新たな産業創造が第一の大きな課題となる。
名古屋圏の人口密度は首都圏の半分、平均的な通勤時間も約半分というように、都市の居住環境の良さは魅力の一つである。しかし、以下のように、まちづくりに対する弱さがあり、国土交通省に期待するところだ。この点を増強すれば、中部はもっと良くなる。
都市の規模に対して、業務床が少ない。
情報・サービス等の都市型産業が首都圏に集中して、中部は少ない。
 三重県のクリスタル・バレー構想や国際自動車コンプレックス構想など新たな産業コンプレックスをバックアップしていく仕組みが大切である。
観光・コンベンション機能が弱い
情報発信力が弱い
物流機能の強化に向け、ハブ港としての港湾整備を図るとともに、外環道の整備が必要。
県・市ではなく、ブロックレベルでの地域整備を図ることが重要。
まちづくりについては以下の点を提言する。
都市の機能強化
名駅周辺等におけるコンパクトで競争力を持ったエリアの創造集積。
Mixed Used、ヨーロッパ的なまちづくりを。
広域連携
  地方分権に対応し、地域の視点から地域づくりを図る必要がある。中部の地域計画に対応し、道路整備と合わせて多極型の都市連携を構築していくことを視野に入れて、公共交通など広域交通計画を立てるべき。
   
桑田((財)岐阜県県民ふれあい会館)
(1) 基盤整備について
基盤整備について切り口がいくつかある中で、「身近に迫っているもの」として、万博に関すること、中部国際空港に関することの2点が挙げられ、大いに国内外の交流を図っていく必要がある。
中部国際空港については、空港へのアクセスを徹底して整備し、使いやすい空港にしていかなければいけない。
空港へのアクセスという点では、リニアを是非活かして、より広い範囲のお客に利用してもらうことも大切。
(2) 国際競争力
日本はものづくりの輸出に頼ってきたが、これが今後もうまくいくのかどうか、代わるものは何か、十分議論していく必要がある。
中部地区は、ものづくりにとって他地域に比べて、豊富な水資源など恵まれた環境にあり、この利点を活かすべきだ。
(3) 安心・安全と環境問題
安心・安全に付随して、環境、地震も念頭におく必要がある。阪神・淡路大震災の教訓を活かして、東海地震を想定した対策を徹底的に見直し、そのための基盤整備を図る必要がある。特に、震災後1週間の対応が肝心。
(4) 農村と都市をどう結びつけるか。
少子高齢化で中山間地域が放置されることが懸念される。山間部の荒れかけた山を整備していく必要がある。都市部の理解を得て、交流連携を徹底的におこなう必要がある。
国際的に見て、食糧危機は必ず深刻化する。今のうちに見直しを行い、食料生産の基盤を整備する必要がある。
   
鈴木(鈴木(株))
中部地域において、静岡は端っこである。行政の分野によっては、所管が関東に属するものと、中部に属するものとがあり、2分されている状態である。どちらかといえば、関東の方を見てきた感が強い。中部国際空港ができると、静岡も西(名古屋方面)との結びつきが強くなるであろう。
名古屋一極集中ではなく、分散型の都市構造の中で、広域的に、道州制も睨みながら、多極的な地域創造を考えていく必要があるのでは。
地震対策も重要。陸・海・空をうまく利用することを考える必要がある。
第2東名、浜松付近ではほぼ整備が完了しつつある。財源が厳しいのは分かるが、予算の問題と切り離し、つくるべきところはつくっていき、部分供用を開始するなどしないと、当面のところで困るのではないか。
港湾は、大地震を考えると、ある程度は、補欠港を作るべきではないか。また、規制を取り除いていただくことも合わせてお願いしたい。
   
須田(東海旅客鉄道(株))
グランドデザインの理念として、中部は、国際的な交易・交流の中枢、産業の中枢を担うべきで、これに尽きる。
交流という点では、観光で交流を促すことも重要。また、観光としての産業(産業観光)にも目を向けるべき。
21世紀に向けて「バランスのとれた地域づくり」をもう一つの理念として掲げるべき。バランスには以下4つの面がある。
産業構造のバランス
 製造業が中心であった構造から情報サービス・観光などのサービス産業を伸ばしていく必要がある。
過密・過疎感のないバランスのとれた地域
 過密・過疎現象は消せないが、インフラを講じることで、例えば中山間地域でも広域の中で均一なサービスが受けられるような地域づくり。
環境と人間活動、地域構造とのバランス回復
バランスのとれたインフラ整備
 道路については、東西軸は整備されて来たが、南北軸は弱い。また、放射状に整備がされてきたが、環状の交通網が弱い。
新しい国土計画では、地域ブロックが自らの計画を作ることになっているが、ブロックの民意を反映させる手段がない。現在の組織を前提に、ブロックの総意を作り上げる仕組みづくりが必要。そうしなければ、地域計画、国土計画はできない。
   
谷岡(中京女子大学)
(1) 局長挨拶で述べられていたようにアウトプット型からアウトカム型へ政策をシフトしていくという方針に感銘を受けた。これからは、GNPではなく、GNH(Gross National Happiness)で表すものを目指していくことになろう。
(2) 松尾座長が述べたように「3世代後の納税者を見据えた計画」という視点が重要。長期的に見た効率性を考えて整備を図るべき。
(3) この地域はあらゆる面で壁・垣根が多すぎる。栄と大須は若宮大通という壁によって分断されていたが、最近では、(ナディアパークの影響もあるが、)栄南地区と大須に人が集まるようになり、人の行き来が発生している。付近にはたいしたビルはないが、人の集まる場所がある。たいした道ではないが人の通る道がある。それらによって人々が壁を越えた好例である。ブータンでは、面白いことにコミュニケーション省という省庁が道路も造っている。 中部地域はモノのための道づくり(物流)は積極的に進められてきたが、人のための道づくり(交流)は遅れている。
(4) 万博では、会場までのアクセスとして地下鉄を延長するべきだった。しかし名古屋市と愛知県という垣根を越えられず、現在の計画になった。関係者は狭義な立場に縛られ過ぎている。次々世代に対する責任という点では皆同じ立場であるはず。このようなバリアを取り払っていかない限り、後世に残すインフラ整備などあり得ない。
   
中村(鳥羽水族館)
少子・高齢化が進んでいく中、経済優先ではなく、環境保全なくして将来はあり得ない。三重県のクリスタル・バレーは、櫛田川の伏流水という日本有数の水がなければシャープは来なかった。環境的な観点から保水能力の高い広葉樹を植えていくなどの取り組みも重要。
ソウルや香港など近隣諸国では、4,000m級の滑走路を備えているのに対して、日本の空港は貧弱である。ハブ空港として国際的な競争力を持つ空港を整備する必要がある。
アメニティという視点も重要で、人間だけでなくあらゆる動植物が生きていく環境を保全していくことが必要。全国の博物館ではエコ・ミュージアム構想という考え方の下、いろいろ取り組みを始めている。
経済発展の度合いに応じて、環境への取り組みも行って行くべき。国土交通においては、開発と保全との交通整理をするべき時に来ている。
   
東(東海大学)
個人の生活を重視するという視点は大切。ゆとりと豊かさ、幅と深みのある地域づくりの輪を広げていくことが大切。
静岡では、静岡駅前の地下道のリニューアルについて市民や地元商店街の人など様々な人が関わりながらWork Shop形式で検討をおこなっている。
清水港の色彩計画については官・民様々な機関が連携して10年に渡る検討をおこなった。美しい景観が形成されていくプロセスの中で、それぞれが「私たちの港づくり」を意識し、商業などが主体的に活性化してきている。このようにプロセスが、他のところでも展開できると良い。
市民の意見をどのように聞くか、どのように施策へ反映させるかといった市民とのパートナーシップを踏まえた連携のあり方が問われている。市民、行政それぞれの立場の違いを認識し、対等な関係で役割分担をしていかなければいけない。
   
水谷(中京大学)
「まんなか懇談会」というネーミングは素晴らしい。
予算的なことから行政は短期的な視点になりがちであるが、長期的な視点で計画を考えていかなければいけない。
これまで日本が遂げた急成長は頭打ちになり、緩やかに下降し始めている。この先10年くらいはゆっくり下がっていくであろうが、その後急激に下降する時が来ると考えられる。
今、厳しい財政事情であるとはいえ、将来を考えればまだ余裕がある。今、何をやるべきなのかを考え、やるべきことをやっていくことが後世にとって重要である。個々の利益ではなく、国全体の利益を考えていく必要がある。
産業の空洞化が深刻化しつつあるが、国民や企業の活動を制約するものを取り去る必要がある。行政こそ、長期的な視点、総合的な視点を持っていなければいけない。
   
箕浦(中日新聞社)
 
中部地域は特色のない地域と言われるが、それでいいと思う。「日本のまんなかにあり、若者もお年寄りも住みやすい地域」を目指すべきだ。
住民にとって住みやすい地域とは、以下のような3つの要素がそろっていることである。この地域は比較的バランスがとれている。今後もそういった長所を伸ばしていく必要がある。
(1) 仕事がある
 若者が生計を立てていけることが重要。これまで培ってきたモノづくりとIT産業とを絡めて、この地域でないと育たない新産業を育成させることが必要ではないか。
(2) 生活がしやすい
 中部地区は、住宅が安く供給されている、短時間で通勤できるという特徴がある。
(3) 楽しみがある
 都市の娯楽性といった面も重要。
住みやすさにとって道路などの交通網は重要なツールとなる。これまでは産業中心に交通網が発展してきた経緯があるが、これからは生活や観光レジャーといった面での交通網が整備されていくべき。鉄道や港といったものもこうした観点で整備を図っていくことが大切。
   
松尾(名古屋大学)
委員の方々にそれぞれご発言いただいた。重要なキーワードがいろいろ出てきたと思うので、事務局で整理していただきたい。
日本は、人口、所得、生活レベルといったものがこれまで成長してきたが、今後は減少していく方向に向かう。そのような傾向の中で、なお豊かさを感ずることができる地域を作っていかなければならない。我々は長期的な視点で、世代を越えた責任を果たしていかねばならない。
地域のブロック化においては、集中的な拠点づくりをしっかりおこなう必要がある。そして、拠点間を幹線インフラで結ぶとよい。こうしたインフラ整備は今のうちに進めていく必要がある。
防災の視点も重要。この地域では、200年も前(江戸時代)に築かれた堤防によって地域が守られてきた。このような後世に残せる防災整備を図ることも大切だ。
   
柳川(中部地方整備局)
次回の有識者懇談会は、7月頃の開催を予定している。それまでに各委員の意見を整理したい。
また、各メンバー間の意見交換もしていきたい。
今日は、貴重なご意見をいただき大変感謝している。

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