活動地域の概要

愛知県蒲郡市三谷町
13,457人(平成21年1月現在)
60 歳〜 69 歳の年代が全体の15% 強 20 代以下は8%
その他の年代は平均10% 程度
5,008世帯
65歳以上の割合 23.3%(平成21年1月現在) 5年後30% 10年後37%
JR駅 毎時2本〜3本普通電車がとまる
産業は水産加工、繊維、温泉 全て産業は衰退傾向、
雇用の中心は市外の自動車メーカー工場へ

地域の抱える課題

85年度末をピークに人口の減少が進んでいることが問題であったが、平成20年度末に21年ぶりに減少していた人口が増加に転じた。その理由としては、ラグーナ蒲郡関連のマンションや企業誘致の影響が大きい。人口の増加がある反面、地場産業である漁業も平成12年の就業者数252人から平成17年の198人に5年間で54人減少していることから第1次産業の高齢化、担い手不足、若者不足が課題となっている。 また、新しい土地からの流動ということで、今までの「祭コミュニティー」のような蒲郡市独自のコミュニティーが薄れ、維持していくことが困難になることも考えられる。

活動の内容






地場産業の活性化という地域のニーズと、障害を持つ方と地域の方の就労場所というNPO法人 楽笑のニーズをマッチングし、漁業組合とNPO、自治会、観光協会等の多様な主体とが協働で「干物」を使って事業を展開した。

@干物の商品マーケティング


干物の商品価値を調査することにより、販売ターゲットを絞り、有効な販路を開拓することを目的とした。


●干物に関するテストマーケティング
 全国の10 代以上の女性を対象に、干物に関するアンケートを
 実施した。
●結果の分析、宣伝や営業への展開
 アンケートを分析し、その結果を元に、チラシの作成、商品の決定、
 店舗レイアウト、商品デザインの開発などを実施した。

A干物の製造ノウハウの技術指導


干物の製造や販売に向けた技術を習得することを目的とした。


●雇用者への技術指導・サンプルの作成
 漁業組合や水産加工会社の協力のもと、雇用者に対して、干物の
 製造、調理、衛生に関する技術指導を行い、商品のサンプルを
 作成した。
●視察・ヒアリング
 ギフトセット開発の視察、飲食店へのヒアリングを実施した。

B干物屋のオープニングイベントの開催


調査及び分析を踏まえ、干物の製造・販売を実施することを目的とした。


●NPO法人楽笑が経営する干物屋『酒菜屋「十兵衛」』の開店にあ
 たり、商品の製造や、オープニングイベントの準備・運営を実施した。
















「ギョギョウランド」

@地場産業ソーシャルマーケティング※意識調査


三谷地域において、事業に対するニーズを把握することを目的とした。


●意識調査の実施
 地域の主婦及び子どもを対象に、地場産業に関する意識調査
 (アンケート・ヒアリング等)を実施した。
●調査結果の分析
 意識調査の結果を分析した。

A地場産業ソーシャルマーケティング勉強会


勉強会でイベントを企画・運営することを通じて、商品開発や食育等に関する新しいアイデアの収集をすることと、地域の需要を高めていくことを目的とした。


●イベントの開催に向けた勉強会の開催
 意識調査の結果や地場産業の事例をもとに、商品開発や市場開拓
 のワークショップを実施し、新しいアイデアを収集し、イベントの企画
 を行った。

B地場産業ソーシャルマーケティングイベント


イベントを通じて、まちづくりや協働に対する理解や街への愛着心を高めるとともに、来年度の活動へと繋げていくことを目的とした。


●「ギョギョウランド」の開催
 ワークショップの意見等を基本としながら、地場産業にちなんだ
 イベント「ギョギョウランド」を企画・開催した。






障害者支援を目的としたNPO法人を発足

  • 障害がある方でも、そうでない方も自分の好きな地域で暮らし続け、そして地域の人と共に生きられるような普通の社会の実現を目指し活動を開始。
  • 障害者と健常者が一緒に働ける場所の創出のため、パン工房「八兵衛」を開業。

地域と協働できる活動に向け『酒菜屋「十兵衛」』を開業

  • 地域と一緒になってこの活動を盛り上げたいと考え、地域の特産物でもある干物を加工・販売するお店『酒菜屋「十兵衛」』を開業。
  • 販売の展開方法や販路の検討などに「ソーシャルマーケティング手法」を導入。

地域住民と活動を共有するため、
参加型のイベント「ギョギョウランド」を開催

  • 地域と一緒になってこの取組みを盛り上げたいと考え、地域みんなでこの取組みを共有できるよう、イベント開催を企画。
  • イベント開催にあたっては、主婦を中心とした地域住民で「まちづくり実行委員会」を組織し、地域みんなが楽しめるイベントの企画・運営を検討。

既存の地域コミュニティの活用

  • 三谷地域には三谷祭りが根強く残っているなど、現在も地域住民の繋がりが強い地域であり、活動を始めた際も地域の方に多くの面で助けられた。

イベントの企画・運営に主婦を中心とした地域住民が参画

  • 「ギョギョウランド」等のイベントの企画・運営は、日頃時間に余裕のある主婦を中心に組織した「まちづくり実行委員会」が中心となって進めた。
  • 企画検討のなかで、「子どもたちが楽しめるイベント」というコンセプトを明確にして準備を進めたことが参加者の増大に繋がったと考えられる。

漁業関係者との合意形成

  • 地場産業(水産加工品)を活動に取り入れたため、地域内で競合となりえる店舗が存在する漁業関係者は抵抗感を示した。それでも、イベント開催等の活動を通して、少しずつ活動が地域の活性化に繋がっていることが分かってもらえ、今では良い協力関係が築けている。

ソーシャルマーケティングの活用

  • アンケート調査の実施等により、干物の販売方法や販路等を様々な角度から検討することができ、インターネットによる販売や飲食店メニューへの採用が確立できた。
  • 食は子どもの世代からだと考え、市内の保育園のおやつに干物を取り入れてもらうことができた。

行政機関の協力

  • イベント開催等に向けた広報への掲載やチラシへの掲載の協力など、行政(市や国土交通省)がPR活動のサポートを行ってくれた。

活動による地域活性化への効果

雇用の効果

  • NPO法人 楽笑の従業員として、毎年約3名を新規に採用。
  • 障害者の雇用については、現在は26 人、来年度からは30 人に増加。

地域活性化への効果

  • NPO法人 楽笑の活動に影響を受けたこともあり、消滅していた漁協の青年部が再度結成。
  • 「ギョギョウランド」等のイベントの参加者も回毎に増加しており、地域の連携強化に一定の効果。

今後の課題

目的の明確化・周知

  • この活動を衰退させないためにも、「まちづくり10年計画(仮称)」など地域が考えた三谷地域の将来の姿の作成し、関係者みんなが目標を共有することが必要。

活動拡充に向けた人材育成

  • 活動を拡充していくためも「渦巻き型」でどんどん関係者を増やしていく必要があるなか、すべての関係者に活動主体であるNPO法人楽笑の理念(思い)が継承されるよう人材の育成が必要。

1.地域の課題(ニーズ)に着目した活動の展開

  • まちづくり活動を始めるにあたり、衰退傾向にある水産業に着目し、まちづくりと地域の活性化を組み合わせたことが地域の理解に繋がった。

2.地域住民を巻き込んだイベント等の企画・運営

  • イベント等の企画検討にあたり、参加する側の地域住民を企画・運営に抜擢し、「子どもたちが楽しめるイベント」というコンセプトを明確にして準備を進めたことが参加者の増大に繋がった。

3.ソーシャルマーケティングの活用

  • 干物について、インターネットによる販売や飲食店メニューへの採用のほか、市内の保育園のおやつへの採用など、ソーシャルマーケティングにより様々な販路が確立できた。

4.漁業関係者等との合意形成

  • 地場産業(水産加工品)を活動に取り入れたため、地域内に競合となる店舗が存在する漁業関係者は抵抗感を示したが、イベント開催等の活動を通して、少しずつ活動が地域の活性化に繋がっていることが分かってもらえ、協力関係が確立できた。

5.行政機関との協働

  • イベント開催等に向けた広報への掲載やチラシへの掲載の協力など、行政(蒲郡市や国土交通省)によるPR活動のサポートが参加者の増大に繋がった。

他地域への展開に向けたポイント

「NPO 法人 楽笑」の活動における成功要因を踏まえ、
同様の取組みを展開するにあたってのポイントを以下に整理する。


活動目的の明確化

活動の実施にあたっては、地域住民の協力が必要であり、地域住民への働きかけのため活動本来の目的を明確化することが必要。


地域の課題に着目した活動の展開

地域資源の再生・活性化が目的とすることで、地域住民の協力が得られる可能性が高くなるため、各地域の資源を活かした活動が必要。


地域住民を巻き込んだイベント等の企画・運営

イベント等の企画・運営には、地域の主婦やインフォーマルな組織(町内会や自治会等)の関係者など、地域の人と繋がりを持っている人材が必要。


利害関係者との合意形成

地場産業を活動に取り入れる場合は、地域内に競合となる店舗が存在することが考えられるため、活動目的を明確に伝え、地域活性化に向けた協力関係を確立することが必要。


行政機関との協働

イベント等の開催に向けては、自治体の広報等への掲載が有効であるため、PR活動に向けたサポート体制の構築が必要。