中部地方整備局における

公共工事コスト縮減対策に関する
新行動計画



平成13年 8月

中 部 地 方 整 備 局


第1 基本的考え方

1.中部行動計画の位置づけ

 「中部地方整備局公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(以下「中部行動計画」という。)は、政府の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」(以下「行動指針」という。)及び国土交通省の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(以下「行動計画」という。)を踏まえ第五港湾建設局及び中部地方建設局において策定した行動計画を統合し、中部地方整備局として新たに策定したものである。


2.これまでの取り組み

 社会資本は、安全で豊かな国民生活の実現や活力ある経済発展に不可欠な基盤であり、今後ともその整備を計画的かつ着実に進めていくことが必要である。社会資本の整備に当たっては、社会経済情勢の動向や国民のニーズを的確に把握し、事業評価などによりその必要性や妥当性を明確にした上で、重点化を図りつつ実施することが重要である。また、そのためのシステムの整備・充実が図られているところである。

 社会資本を整備する手段としての公共工事は、「より良いものをより安く」提供する、という観点から実施することが求められているところである。このため、「厳しい財政事情の下、限られた財源を有効に活用し、効率的な公共事業の執行を通じて、社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢化社会到来に備えるには、早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進する必要がある」との認識の下、政府においては、平成9年1月に、全閣僚を構成員とする「公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議」を設置し、同年4月に「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」(以下「旧指針」という。)を策定した。

 運輸省、建設省、北海道開発庁においては、旧指針を踏まえ、それぞれの分野における事業の実施に際し、取り組むべき内容をとりまとめた「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」(以下「旧計画」という。)を策定し、これらに基づき、各省庁と一致協力して施策を推進してきたところである。

 第五港湾建設局、中部地方建設局においても平成9年に「第五港湾建設局 建設費縮減行動計画」及び「公共工事コスト縮減に関する行動計画」(以下「中部旧計画」という)を策定し、施策を推進してきたところである。

 旧指針及び旧計画に基づく平成9年度から11年度の3年間の取り組みにおいては、全省庁の連携や公共工事担当省庁等における創意工夫の強化により、公共工事執行システムの中で価格に影響を及ぼす様々な要因について改革が進んだ。平成12年9月に行ったコスト縮減のフォローアップの結果によれば、平成11年度までのコスト縮減率は約10%となっており、旧指針及び旧計画において掲げられていた数値目標をほぼ達成したところである。

 中部地方整備局の平成9年度から平成11年度の3年間の取り組みにおいては、設計方法の見直し、技術開発の推進、建設副産物対策等の施策の推進により、平成11年度のコスト縮減率は10.2%となっており、「中部旧計画」において掲げていた数値目標はほぼ達成したところである。


3.新計画の考え方

 このような現状を踏まえ、現下の状況を鑑みるに、これまでの公共工事コスト縮減施策により一定の成果が得られたものの、依然として厳しい財政事情の下で引き続き社会資本整備を着実に進めていくことが要請されていること、また、これまで実施してきたコスト縮減施策の定着を図ることや新たなコスト縮減施策を進めていくことが重要な課題となっている。

 また、今後に向けては、工事コストの低減だけでなく、工事の時間的コストの低減、施設の品質の向上によるライフサイクルコストの低減等についても取り組むべき重要な課題となっていることから、これらも含めた総合的なコスト縮減を図っていく必要がある。

 さらに、「行政コスト削減に関する取組方針」(以下「取組方針」という。)が平成11年4月27日に閣議決定されており、公共工事のコスト縮減についても、取組方針の一環のものとして位置付けられているところである。

 したがって、政府においては、取組方針の下、今後引き続き、地方、民間の主体的な取り組みを含めて各省庁が一致協力して総合的に公共工事のコスト縮減に取り組むこととし、平成12年度以降の新たな行動指針を策定した。

 国土交通省においては、政府における新たな行動指針の策定を踏まえ、運輸省、建設省及び北海道開発庁において策定した行動計画を統合し、新たな行動計画を策定することとし、中部地方整備局においても国土交通本省の行動計画を踏まえ第五港湾建設局及び中部地方建設局において策定した行動計画を統合し、新たな中部版の行動計画(以下「中部行動計画」という。)を策定する。

 なお、行動計画の目標期間は、行動指針と同じく、平成12年度から、取組方針の最終年度である平成20年度末とする。


4.行動計画の対象

 行動計画は、基本的には、工事に関するコスト縮減を対象としており、用地取得に係るコストは対象としていないが、用地取得についても今後とも適切かつ計画的に推進していくこととする。


5.地方公共団体等との連携強化

 公共工事のコスト縮減を図り、社会資本整備を効率的に推進するには、地方公共団体等との積極的な連携が不可欠と考えられる。中部地方整備局は、管内地方公共団体等と設置している「中部地区建設費縮減推進連絡会議」及び「公共工事コスト縮減対策中部ブロック三省連絡調整会議」での情報交換等を一層密にし、連携強化を図ることとする。


6.独自の取り組み

 (1)他業界との連携

  総合的なコスト縮減を推進するためには、官だけの取り組みだけではなく、民間が実施している施策を取り込むことが重要であり、建設産業だけでなく他産業とも意見交換及び情報収集等の連携を図る。
(具体策)
・建設発生土研究会の活用
【建設発生土を窯業原料へ利用することを検討する。】
・中部地区国産木材利用促進委員会の設置
【間伐材等の積極的な普及促進を図る。】
等を総括して中部地方公共工事コスト縮減推進懇談会(仮称)を設置する

 (2)新技術の積極的な活用

  建設コスト縮減に大きく寄与する新技術・新工法の普及及び活用方策の検討をするため、「中部地方整備局新技術活用に係る実施要領」を策定し、新技術・新工法の普及活用を促進する。
(具体策)
・新技術活用評価委員会における事務所活用技術の推薦を推進する。
・新技術の活用後評価の実施と評価結果の公開による技術開発の支援
・産官学との共同開発を積極的に実施する。

 (3)インハウスVEの実施

  各事業の計画・設計段階において、担当する部局の技術力や創意工夫等を活用しながら技術の検討・提案等を行う。
(具体策)
・技術研究会の設置

 (4)フォローアップ効果の検証方法の検討

  建設事業のコスト縮減の評価をPI方式の導入等により検証する。
(具体策)
ホームページ等の活用による意見聴取の実施。


7.フォローアップ

 行動計画の実施状況については、具体的施策の着実な推進を図る観点から、建設費縮減対策推進委員会(委員長:中部地方整備局長)においてフォローアップする。
 また、中部行動計画の進捗状況により具体的施策は適宜見直しを行う。


8.行動計画取り組みの経緯
H 6.12 建設本省版 行動計画 策定
H 7. 8 中部地建版 行動計画 策定
H 8. 1 運輸本省版 行動計画 策定
H 8. 8 五建版 行動計画 策定
H 9. 1 公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議
H 9. 4 公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議
○政 府 : 公共工事コスト縮減対策に関する行動指針策定
○建設省 : 建設省公共工事コスト縮減対策に関する行動計画策定
○運輸省 : 運輸関係公共工事コスト縮減対策に関する行動計画策定
H 9. 7 中部地方建設局公共工事コスト縮減対策に関する行動計画策定
H 9.11 第五港湾建設局コスト縮減実行計画策定
H10. 5 平成9年度フォローアップ結果公表 中部地建:縮減率3.6% 縮減額86億円
H11. 4 行政コスト削減に関する取組方針の閣議決定
H11. 4 平成10年度フォローアップ結果公表 中部地建:縮減率6.4% 縮減額137億円
H12. 9 公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議
○政 府 : 公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針策定
○建設省 : 建設省公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画策定
○運輸省 : 運輸関係公共工事コスト縮減に関する新行動計画策定
平成11年度フォローアップ結果公表 中部地建:縮減率10.2% 縮減額345億円
                 五  建:縮減率8.94% 縮減額 46億円
H12.11 中部地方建設局における公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画策定
H12.12 第五港湾建設局建設コスト縮減対策新実行計画策定


9.行動計画の取り組み体制

図


中部地方整備局建設費縮減対策推進委員会設置要項

1.目的

  政府の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動指針」及び国土交通省の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」を踏まえ中部地方整備局の公共工事コスト縮減の徹底を計るため建設費縮減対策推進委員会を設置する。


2.地方整備局建設費縮減対策推進委員会

(1)委員会
 1)委員会メンバー等
別表―1のとおりとする。

 2)委員会所掌事務
〈1〉「中部地方整備局公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」の策定
中部地方整備局の「公共工事コスト縮減対策に関する新行動計画」(以下「中部新行動計画」という。)を策定する。
〈2〉フォローアップ結果の検証
「中部新行動計画」のフォローアップ状況ほか、委員長が必要と認める事項について、幹事会から報告を受け、状況の検証を行う。
〈3〉その建設費縮減の推進に関する事項

(2)幹事会
 1)幹事会メンバー等
別表―2のとおりとする。

 2)幹事会所掌事務
〈1〉「新行動計画」(案)の作成
「中部新行動計画」(案)を作成する。
〈2〉各部の建設費縮減の検討・実施状況の把握
建設費縮減の検討・実施状況について各部から報告を受け、状況を把握するとともにとりまとめを行い、委員会へ報告する。
〈3〉建設費縮減に関する情報提供

「国土交通省公共工事コスト縮減対策に関する行動計画フォローアップ委員会」等からの提案、幹事長が必要と認めた情報等を各部会及び事務所委員会へ提供する。


3.事務所建設費縮減検討部会
  1.の目的を達成するため、事務所等の所長を部会長とする事務所建設費縮減検討部会(以下「事務所等部会」という。)を設置する。

 1) メンバー表
別表―3のとおりとする。

 2) 所掌事務

〈1〉各事務所の取り組み方針の検討
各事務所において実施する具体的施策の取り組み方針を検討する。
〈2〉各事務所で実施する具体的施策へのフォローアップ
各事務所において取り組んだ具体的施策へのフォローアップを実施する。

附則
 この設置要項は、平成13年8月28日から実施する。

 中部地方整備局における建設費縮減対策推進委員会及び同幹事会の構成メンバーは以下のとおりとする。


別表―1 委員会メンバー


委 員 長 : 局 長
副委員長: 副局長
委  員: 企画部長
建政部長
河川部長
道路部長
港湾空港部長
営繕部長
事 務 局 : 企画部技術管理課


別表―2 幹事会メンバー
幹事長 : 技術調整管理官
幹 事 : 企画課長
広域計画課長
技術管理課長
都市整備課長
住宅整備課長
河川計画課長
河川工事課長
河川管理課長
電気通信課長
道路計画課長
道路工事課長
道路管理課長
交通対策課長
機械課長
港湾事業課長
計画課長
工務検査課長
木曽川上流工事事務所長
静岡国道工事事務所長
名古屋国道工事事務所長
三重工事事務所長
天竜川上流工事事務所長
名古屋港湾空港工事事務所長
中部技術事務所長
名古屋港湾空港技術調査事務所長
事 務 局 : 企画部技術管理課
別表―3 事務所部会メンバー

  部 会 長 : 事務所長
  部 会 員 : 副所長(技術)、技術各課長
       その他部会長が必要と認めたもの
  事 務 局 : 工務課

 中部地方整備局における公共工事コスト縮減対策に関する取り組みフローについては以下のとおり。



図

 

 

第2 具体的措置

1.具体的施策の実施に当たっての基本的な視点

(1)総合的なコスト縮減の必要性

 中部行動計画においては、工事コストの低減のほか、工事の時間的コストの低減、工事における品質の向上によるライフサイクルコストの低減、工事における社会的コストの低減及び工事の効率性向上による長期的コストの低減を基本的な視点として、公共工事に関する様々な要素について各種の施策を実施するものとし、これらの施策効果により公共工事に関する総合的なコスト縮減を目指す。

〈1〉工事コストの低減

 平成9年度から11年度の3年間の取り組みと同様に工事の計画・設計等の見直し、工事発注の効率化、工事構成要素のコスト低減等の施策を講じることにより、工事コストの着実な低減を図る。

 

〈2〉工事の時間的コストの低減

 事業箇所の集中化、新技術を活用した工事期間の短縮等により、工事の時間的コストの低減を図る。

 

〈3〉ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)

 施設の長寿命化、省資源・省エネルギー化や環境調和型への転換を進めるなど、施設の品質の向上を図ることにより、ライフサイクルを通じてのコスト低減や環境に関するコスト低減を図る。

 

〈4〉工事における社会的コストの低減

 工事における建設副産物対策の推進や環境改善策による環境負荷の低減、工事に伴う交通渋滞緩和、工事における事故の減少等を通じて社会的なコストの低減を図る。

 

〈5〉工事の効率性向上による長期的コストの低減

 工事に関する規制改革、工事情報の電子化の推進や新技術の採用の促進等により、工事の効率性を高めるとともに、建設業の生産性向上を促し、長期的なコストの低減を図る。

 

(2)政府が一体となった取り組みの必要性

 公共工事は、多くの要素に関係する社会的活動であることから、公共工事の実効的なコスト縮減を図るためには、公共工事担当省庁のみならず、その他の関係省庁を含め政府が一体となった広範な取り組みが必要である。

 

2.具体的施策の実施に当たっての留意点

(1)機能・品質の確保

 公共工事の価格低減を目指すことが、社会資本が本来備えるべき機能・品質を損うこととなるのでは、行動計画の趣旨に反することとなる。

 公共工事のコスト縮減については、社会資本が本来備えるべき供用性、利便性、公平性、安全性、耐久性、環境保全、省資源、美観、文化性等の所要の基本機能・品質を満足させた上で、総合的なコスト縮減を目指すものである。

 

(2)不当なしわ寄せの防止

 具体的な施策によるコスト縮減の裏付けなしに工事価格のみを下げることによって、下請け企業、資機材供給者、労働者等一部の関係者が、不当なしわ寄せを被るような状態を生起させてはならない。

 すなわち、公共工事の価格低減を性急に図るために、いわゆる「歩切り」のような手段をとることは、下請け企業等へのしわ寄せにつながる危険性が高く、適切な手段とは言えない。また、「歩切り」のような手段は、コスト縮減の施策に含んではいない。

 

(3)不正行為の防止

 公共工事の実施に当たっては、入札談合等の不正行為を防止し、公正な競争を確保することが不可欠であることは言うまでもない。このため、平成6年度より透明性及び競争性をより高めるための入札・契約制度の改革を実施しているところである。さらに、平成12年には、透明性の確保、公正な競争の促進、適正な施工の確保及び不正行為の排除の徹底を基本原則とした「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」が成立し、併せて「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」が閣議決定されたところである。

 これらの中では、入札及び契約の過程並びに契約内容の公表等の他、監理技術者の専任等を確認するための現場の施工体制の点検、一括下請負等建設業法違反の疑いがある場合の建設業許可行政庁等への通知、入札談合情報があった場合等における公正取引委員会への通知、不正行為を行った事業者に対するペナルティの厳正な運用、独占禁止法等の遵守徹底のための発注者及び事業者に対する講習会等の実施等の各種措置を講ずることとしている。

 これらの施策を通じて、国及び地方公共団体等の発注者全体が公共工事の入札・契約の適正化の促進を図るとともに、入札談合等の不正行為の断絶に努め、適切な公共工事のコスト形成に資することとする。

 

3.具体的施策

 中部行動計画においては、行動計画に定める施策も含め、以下の5分野について30項目の施策を、他省庁とも連携しつつ、平成20年度末までに実施する。これらの施策には、中部旧計画のフォローアップにおいて継続が必要とされた個々の施策を盛り込むとともに、公共工事コスト縮減の基本的な考え方を踏まえて計画から施工に至る各分野を対象に網羅的に総点検を行い、具体的に取り組むべきこととされた施策も盛り込んでいる。

 なお、中部行動計画策定後も、社会経済情勢の変動に的確に対処しつつ引き続き新たにコスト縮減に資する事項の調査等を進め、必要に応じて実施すべき施策として位置付けていくものとする。

 また、コスト縮減効果については、原則として従来からの手法により計測するものとするが、これによることが適当でない施策については、当該施策の特性に応じ、できるだけわかりやすい指標により計測するよう努める。

 

(1)工事コストの低減

 平成9年度から11年度までの3年間の取り組みと同様に、工事の計画・設計等の見直し、工事発注の効率化、工事構成要素のコスト低減、工事実施段階での合理化、規制改革等のための具体的施策を継続・充実して実施することにより、工事コストを低減する。

 これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、工事費に対する縮減率で表すことにし、縮減率は、施策適用前後の比較設計による縮減額の積み上げや建設物価の実質変動率により算定する。

 

1)工事の計画・設計等の見直し

a.計画手法の見直し

 工事の実施に当たって、必要以上に華美や過大なものとなっていないか、適切なサービス水準かなどの観点で検討し、必要な施策を講じる。

(施策事例)

 ・周辺の他事業と連携した工事の実施

 ・既存施設を有効利用した工事の実施

 

b.技術基準等の見直し

 技術基準等が急速な科学技術の進歩に対応できているか、基準類の運用が画一的なために不経済な設計となっていないか、占用等の各種許可条件について改善する点はないか等の観点に立って、公共工事担当省庁が所管する技術基準等を、継続的に点検し、必要に応じてその見直しを行う。

 また、技術基準等の見直しに当たっては、国際基準等との整合を勘案しつつ性能規定化を進める。

(施策事例)

 ・基準類の性能規定化の検討と推進

 ・河川、道路、下水道、港湾、土地改良、治山等に関する基準類の見直し

 

c.設計方法の見直し

 コスト縮減の観点から当該工事現場に最適の設計とするため、設計VEの実施や設計段階におけるコスト縮減提案書の作成など、設計の初期段階において構造形式や施工方法等を組織全体で多角的に検討する体制の定着を図る。

 また、施工手間を含め総合価格で最小となる設計思想への転換(材料ミニマムから労働量ミニマムへ)の推進と、これを目的に作成した設計マニュアルの普及を図る。

 さらに、性能規定の考え方に基づく新しい設計の採用やプレキャスト製品の標準化を進める。

(施策事例)

 ・現場に最適な設計とするための設計VE等の推進

 ・コスト縮減に資する設計方法の普及

 

d.技術開発の推進

 長期的にコスト縮減につながる技術の開発及び積極的な採用と評価が一層重要になっている。このため、官民の連携の下、こうした技術の研究開発を進めるほか、民間において開発された新技術について、パイロット工事の実施、情報の提供や情報交換体制の整備など、新技術を活用し、普及させるための制度を充実し、民間の開発技術の活用・普及を促進する。

(施策事例)

 ・コスト縮減に資する研究開発について官民共同研究開発等の充実

 ・新技術活用促進システムに沿った民間技術の活用と評価

 ・建設技術フェアの開催による新技術紹介とその活用

 

e.積算の合理化

 公共工事の積算について、公共工事担当省庁等間の連携を深め、積算基準等の統一、明確化、公開、機動性の向上をさらに図る。また、CALS/EC等の推進に併せて積算に必要な数量データや図面の電子化の拡大を進めるほか、共通仕様書等の電子化と公開により、より多くの関係者の提案を得てこれらを迅速かつ的確に改正できる体制を築く。

(施策事例)

 ・公共工事担当省庁等間の積算調整会議の継続

 ・積算に使用する数量データや図面等の電子化の推進

 ・共通仕様書等の迅速かつ的確な改定体制の整備

 

2)工事発注の効率化等

a.公共工事の平準化

 今後とも、工事の計画的かつ迅速な発注、適切な工期の設定、国庫債務負担行為の活用等により、公共工事の平準化を引き続き積極的に推進する。また、地方公共団体に対しても、一層の平準化への取り組みを要請する。

(施策事例)

 ・工事の計画的な発注、適切な工期の設定、国庫債務負担行為の活用等による円滑な工事の実施

 ・地方公共団体に対する一層の平準化への取り組みの要請

 

b.適切な発注ロットの設定

 中小建設業者の上位ランク工事への参入機会の拡大など、中小企業の受注機会の確保に配慮しつつ適切に発注ロットを設定する。また、事業箇所の重点化等により投資の重点化を図る。

(施策事例)

 ・中小企業の受注機会の確保に配慮しつつ、適切な発注ロットの設定を推進

 ・地方公共団体に対する国と同様の取り組みの要請

 

c.入札・契約制度の検討

 技術による競争を促し、民間の技術力を活用し、さらに技術開発のインセンティブを与えるため、技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式、総合評価方式等)など新しい入札契約制度を適用する工事の拡大を図るとともに、さらに提案を出しやすい仕組みへの改善などを進める。また、設計面ではプロポーザル方式の適用を拡大する。

(施策事例)

 ・技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式、総合評価方式、性能発注方式等)を採用した対象工事の範囲の拡大等と制度内容の改善

 ・コンサルタント業務のプロポーザル方式の適用を拡大

 

d.諸手続の電子化等

 調査・計画・設計・積算・施工・管理に関する工事関係文書等の標準化・電子化、電子調達システムの導入、地方公共団体への支援などにより、公共工事におけるCALS/EC化を進める。

(施策事例)

 ・調査・計画・設計・積算・施工・管理に関する工事関係文書等の標準化・電子化

 ・電子調達システムの導入

 ・地方公共団体に対する国と同様の取り組みへの支援

 

3)工事構成要素のコスト低減

a.資材の生産・流通の合理化、効率化

 建設資材における生産・流通慣行の改善や物流の効率化を推進するため、調達・流通実態調査を踏まえた情報化、規制改革等を進める。

(施策事例)

 ・建設資材の調達・流通実態調査の実施及び改善提案

 

b.資材調達の諸環境の整備

 品質を確保しつつ、多様な資材調達環境を引き続き整備するため、海外資材の活用促進、規格・仕様の標準化、統一化や性能規定化、品質検査等の見直し等を進める。

(施策事例)

 ・海外資材の価格情報の提供、海外資材活用モデル工事の実施など海外資材活用策の推進

 ・資材の規格・仕様等の標準化、統一化、性能規定化

 

c.優良な労働力の確保

 生産技術の進歩、機械化の進展に対応し、「基幹技能者」や「多能工」の育成を継続して行う。また、工事の平準化、高齢化対策、若年労働者確保対策、労働環境の改善等を通じ、優れた建設技能者の安定的確保を図る。

(施策事例)

 ・業種横断的訓練校(平成9年4月開講)における多能工等の育成

 ・「基幹技能者」育成事業の支援

 ・労働環境改善の支援

 

d.建設機械の有効利用

 建設機械の有効利用を図るため、建設機械の労働安全対策に関する手続等の効率化等、安全・環境対策の実施を図る。

(施策事例)

 ・維持管理用建設機械の有効活用

 

4)工事実施段階での合理化・規制改革等

a.労働安全対策

 労働者の安全確保を図るとともに労働安全対策の効率化を継続的に進めることが必要であり、事業者に効率的な安全管理の普及を図る。

(施策事例)

 ・安全衛生教育のための教材支援

 

b.交通安全対策

 路上工事や海上工事について、各種の許可申請手続の合理化を推進するほか、集中工事の実施の促進等により、路上工事の効率的実施と渋滞時間の低減を図る。

(施策事例)

 ・許可申請手続の合理化

 ・集中工事の実施や混雑時間帯を避けた工事の実施の促進

 

c.環境対策

 建設機械の排出ガス、騒音等の環境対策にあたり、国際規格との整合や関係省庁の施策の整合に配慮することにより、効率的な環境対策の実施を図る。

 

d.建設副産物対策

 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律を中心とした新たな制度の適正な運用、建設副産物の発生抑制技術や再生利用技術の開発、情報交換システムの充実、活用等により、引き続きリサイクル率を向上しながらコストの低減を図る。

(施策事例)

 ・建設副産物の発生抑制の推進(建築物、工作物の長寿命化等の技術開発等)

 ・再生資源の利用促進及びリサイクル技術の開発の推進

 ・情報交換システムの充実、活用

 ・公共工事関係省庁間の連絡の強化

 

e.埋蔵文化財調査

 公共工事の実施に伴う埋蔵文化財調査を円滑に実施するため、公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整体制を継続するほか、調査・測量技術の向上を図る。

(施策事例)

 ・公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整体制の継続

 

f.消防基準、建築基準等

 建築基準の性能規定化等を内容とする改正建築基準法は、平成12年6月に完全施行されたことを踏まえ、新技術・新工法導入の円滑化を図る。

 公共建築工事においては、これを踏まえ、技術基準の見直し及び体系化を推進し、その普及を図るとともに、消防法に関する諸手続についても、必要に応じて合理化方策を検討し、さらに電気事業法及びガス事業法等に関する諸手続の合理化方策を講じる。

 

(2)工事の時間的コストの低減

 個々の工事の効率的な実施は、早期の便益発現などの時間的コスト低減効果をもたらす。このため、事業箇所の集中化、新技術の活用による工事期間短縮などにより時間的効率性の向上を図る。

 これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、事業箇所数や短縮時間、短縮による便益など施策の特性に応じた指標で計測する。

(施策事例)

 ・工事箇所の集中化、他事業との連携による機能の早期発現

 ・新技術の活用による工事期間の短縮

 

(3)ライフサイクルコストの低減(施設の品質の向上)

 公共工事によって整備される各種の施設については、「より良いものをより安く」という観点から整備していく必要があることは言うまでもないが、それだけではなく、より耐用年数の長い施設、省資源・省エネルギー化に資する施設、環境と調和する施設等の整備を推進するなど、施設の品質の向上を図ることにより、ライフサイクルを通じてのコストの低減や環境に対する負荷の低減を図る。

 これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、転換率など施策の特性に応じた指標で計測する。

 

a.施設の耐久性の向上(長寿命化)

 ライフサイクルを通じてのコスト低減の観点から、施設の長寿命化を図る。

(施策事例)

 ・耐久性を向上(長寿命化)した構造物に転換

 ・官庁施設の施設毎の適切な耐久年数の設定

 

b.施設の省資源・省エネルギー化(運用、維持管理費の低減)

 ライフサイクルを通じてのコスト低減の観点から、施設の省資源・省エネルギー化を図る。

(施策事例)

 ・庁舎等における照明、熱交換設備等の省エネルギー化

 ・太陽光等のクリーンエネルギーを活用した施設の整備

 

c.環境と調和した施設への転換

 環境に係るコスト等の低減の観点から、環境と調和した施設、バリアフリー化した施設に転換する。

(施策事例)

 ・環境調和型に転換した施設の整備

 ・バリアフリー化した施設の整備

 

(4)工事における社会的コストの低減

 公共工事においては、先導的に建設副産物対策や環境対策、安全対策を実施していくことが求められている。これらの施策の中には、直接的な工事コスト低減にはつながらないものもあるが、社会的なコスト低減の観点で重要な施策であり、今後とも引き続き積極的に対応していくことが必要である。このような観点に立って、建設副産物対策の推進や環境対策による環境負荷の低減、工事中の交通渋滞緩和、工事中の事故の減少などを通して社会的なコストの低減を図る。

 これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、リサイクル率等施策の特性に応じた指標で計測する。

 

a.工事におけるリサイクルの推進

 建設副産物等のリサイクル等を進めることにより、資源の有効利用や環境負荷量の低減を図り、社会的コストを低減する。

(施策事例)

 ・建設副産物対策の推進

 ・再生資源や資源循環に資する資材等の公共工事での活用

 

b.工事における環境改善

 工事における環境改善策により環境負荷の低減を図り、社会的コストを低減する。

(施策事例)

 ・環境負荷の低減に資する建設機械の採用

 ・公共工事におけるISO14001の運用

 

c.工事中の交通渋滞緩和対策

 現道上での交通渋滞を緩和するよう工事を工夫し、社会的コストを低減する。

(施策事例)

 ・路上工事における集中工事等の実施

 

d.工事中の安全対策

 工事において、安全性の水準を改善することにより、人的な損失を低減する。

(施策事例)

 ・事業者に対する安全管理についての助言、情報提供、安全教育等についての支援

 ・事故情報の分析による安全対策への反映

 ・建設機械施工の安全性向上

 

(5)工事の効率性向上による長期的コストの低減

 民間企業の有する技術力を公共工事において積極的に活用することにより、工事の効率性が高められるとともに、建設業の生産性向上を促し、長期的なコスト低減が期待できる。具体的には、各種の規制改革等を通じた効率性の向上、個々の工事における新技術の活用、工事情報の電子化や電子交換等の実施、建設業における情報通信技術(IT)の利用拡大、入札・契約制度の的確な運用等を通じた不良・不適格業者の排除等を通じて、長期的なコスト縮減を図る。

 これらの施策の実施によるコスト縮減効果については、規制改革の実施状況、工事情報の電子化を実施した工事件数など施策の特性に応じた指標で計測する。

 

a.工事における規制改革

 工事に関する各種の規制改革の実施を通じて、長期的にコスト低減を図る。

(施策事例)

 ・工事における規制改革

 ・公共工事におけるIS09000sの導入

 

b.工事情報の電子化

 工事情報や手続の電子化等により工事の効率化を図るとともに、建設業における情報通信技術(IT)の利用を拡大し、長期的にコスト低減を図る。

(施策事例)

 ・工事情報の電子化や電子交換の実施

 ・工事の入札手続の電子化の実施

 ・地方公共団体への技術的支援

 

c.工事における新技術の活用

 工事における新技術の活用により、長期的にコスト低減を図る。

(施策事例)

 ・工事における新技術の採用

 ・技術提案を受け付ける入札・契約方式の採用