アンカーフレーム・アーチ支承の据付け

写真は、アーチ部材を拱台に固定するアンカーフレームとアーチ支承を一体化させて据え付けているところです。
アーチ支承は、アーチ拱台に据え付けてアーチ基部を支えるものです。アーチ架設途中はアーチ形状が変形しやすいため、支承形式には架設用として球面支承を採用し、アーチ基部に作用する過度な力を逃がします。この支承は、架設時の最大反力約1100tを支えることができます。
全ての部材の架設完了後は、アーチ基部とアンカーフレームをボルトで固定し、コンクリートで拱台と一体化させることで、アーチ部材が強固に固定されます。

ワイヤーブリッジの設置

ワイヤーブリッジは、部材の架設に先立って、天竜川両岸のアーチ拱台(アーチ基部のコンクリートブロック)間を結ぶもので、約210mの長さになります。
設備の目的として、天竜川の対岸へ行き来するための通路設備、高所で架設する際の作業員の墜落防止設備、天竜川やJR飯田線に対する落下物の防護設備の機能を持たせています。

斜吊り設備の組立て

斜吊り鉄塔は、天竜川両側のアーチ拱台上に1基ずつ設置し、張り出し架設中のアーチリブを支える斜吊りワイヤーからの力を支持するもので、鉄塔の高さは約40m、間隔は約220mです。
アーチ部材の架設開始以降、天竜川やJR飯田線を跨いで約1700tのアーチ部材が閉合するまでの間、斜吊りケーブルを支持する重要な設備になります。

ケーブルクレーン設備の組立て

ケーブルクレーンは、アーチや補剛桁などの部材を吊りながら架設地点まで移動させるための設備で、鉄塔を天竜川の両岸に1基ずつ設置します。
315mの鉄塔間には5系統のワイヤーを張っており、1系統あたり最大30tまでの重量物を吊ることができます。鉄塔の高さはA1川路側65m、A2千代側60mと高く航空保安施設に該当するため、紅白に塗装しています。

斜吊りケーブルの設置

斜吊りケーブルは、張り出し架設中のアーチ部材を斜方向に引張りながら斜吊鉄塔を介して支持するもので、支持点1箇所あたり4本のケーブルから構成されています。
架設期間中は、ケーブル張力を常時計測しながら安全性を確認するとともに、張力調整を行ってアーチ形状を整えます。

アーチリブの架設 1

アーチ部材の架設が約1/4程度進んだ状況写真です。本橋のアーチリブは、一般的な平行なアーチとは異なり、アーチ基部からクラウンに向けて主構間隔が狭くなる「バスケットハンドル型」を採用しています。アーチの架設が進む毎に、その形状がはっきり分かるようになってきています。
アーチ部材には足場を地上で先行設置し、架設後の高所作業を削減させることにより、第三者や作業員の安全性を高めています。

現場溶接継手

アーチや補剛桁などの鋼製部材は、工場で製作して現場までトレーラーで輸送するため、輸送可能な大きさや重量に分割する必要があります。
本工事で使用するケーブルクレーンは、輸送条件により決まる部材重量以上の吊り能力があるため、高所での架設回数を削減するために、地上で事前に連結しておく部材があります。 その際の連結手法として、現場溶接継手を用いています。現場溶接作業を行う際は、風雨による影響を避けるため、溶接個所を風防設備で囲います。

アーチリブの架設 2

アーチ部材の架設が進み、アーチ頂点のクラウン部材の結合まであと少しです。 クラウン部材は両岸から張り出したアーチ間に落し込み架設するため、この段階でアーチ形状の最終調整を行うとともに、落とし込み間隔の計測・調整を行って、クラウン部材の架設精度を高めます。

アーチクラウン(閉合部材)の架設

アーチクラウンの架設は、アーチ橋架設工事の最大の山場になります。クラウン部材を架設することにより、両岸から張り出したアーチが繋がり、アーチが自立してより安定した構造になります。
斜吊りケーブルや斜吊鉄塔設備は、アーチの閉合により役割が終わり、解体作業に入ります。

高力ボルト継手

ケーブルクレーンにより架設した各部材の連結は、高力ボルト継手を用いて行います。採用されたボルトは、摩擦接合用トルシア形高力ボルト(M24、M22)で、総本数は約 22 万本となります。

支柱部材の架設

支柱部材は、アーチリブと補剛桁を繋ぐ柱部材です。現場ヤードでは横に倒してあるので、ケーブルクレーンで建て起こしてから架設地点へ移動させます。
本工事の支柱は約70度に傾斜しているため、左右の支柱間を繋ぐ仮設部材を設置し、架設途中の安定性を高めるとともに、架設精度の向上を図ります。

補剛桁の架設

補剛桁は、アーチクラウン部より両側へ架設していきます。アーチ区間はケーブルクレーンにより架設し、側径間はトラッククレーン及びクローラクレーンにより架設します。

支承の据付け

本橋の支承は約600tを支えることができるもので、補剛桁の桁端部に全4基を設置します。支承形式は可動型の密閉ゴム支承板支承を採用しており、摺動面には摩擦係数の低いステンレス板とテフロン(PTFE)による移動機能を持たせ、温度変化による桁の伸縮や地震時に桁を移動できるようにしています。

PC床版の架設

本橋の床版は、プレキャストPC床版(約2m×約12.7m)を採用しています。床版厚は27cmで、コンクリートの設計基準強度は50N/mm2です。
プレキャストPC床版は、アーチ区間ではケーブルクレーンにより架設し、側径間はトラッククレーン及びクローラクレーンにより架設します。

現場塗装

本橋の塗装仕様は、桁の外面にC-5塗装系(ふっ素樹脂塗料)、箱桁の内面にD-5塗装系(変性エポキシ樹脂塗料)を採用しており、耐久性を高めています。また、塗装の劣化しやすいボルト継手部やアーチリブ基部には、鋼材腐食を予防するために下塗り塗装(エポキシ樹脂塗料)を一層増し塗りしています。

足場の解体

高力ボルト継手、現場塗装、PC床版架設のために設置した足場は、作業が終了した箇所から、順次足場を解体します。
天竜川やJR飯田線に対する安全確保のために設置したワイヤーブリッジは、最後に解体します。

橋本体の完成

上部工が完成しました。
橋梁前後の土工、舗装、照明設備等の整備が続きます。

完成

上部工事完了後は、床版上面に舗装を施し、天龍峡大橋が完成となります。
本橋は桁下に歩道を有しており、歩いて天竜川を渡ることが出来ます。
天竜川からの高さは約80m。名勝天龍峡を上空から望む、迫力満点の絶好ビューポイントとなっています。