ふじあざみ 第42号(1)
 
厳しい気象条件の中で生きる
富士山は比較的新しい山です。噴火によって堆積した溶岩や砂礫の層は、植物を育てる豊かな土壌が少ない上に、雨水を貯えることができず乾燥しています。さらに、富士山は独立峰のため風が非常に強く、気象条件がとても厳しい環境なのです。植物はもちろん、植物を食糧として生きる動物たちにとっても、富士山は生存環境としては悪条件がいっぱいです。しかし、それらの悪条件を克服しながら力強く生きている哺乳動物たちがいます。他の山地との交流がむずかしいためか、その種類は少ないようですが、小型のものから大型のものまで、様々な哺乳動物が生息しています。中でも、小型哺乳類の種類が多く、中型・大型哺乳類は少ないようです。独立した山である富士山にこれらの動物が生息するようになったのはどうしてでしょうか。もともと山麓に生息していた動物たちが、山麓の開発が進むにつれ、富士山に集ってきたと言われています。
富士山は、その標高により、山麓帯、山地帯、亜高山帯、高山帯に分けられます。山地帯から亜高山帯にかけては、ノウサギやモモンガ、ムササビ、リス、タヌキ、キツネ、ツキノワグマ、イノシシなどが生息し、亜高山帯から高山帯にはオコジョやカモシカなどが生息しています(哺乳類の垂直分布図参照)。富士山の動物たちは警戒心が強く、夜行性のものが多いため、なかなかお目にかかれませんが、じっくり観察すると生活の確かな証拠を残してくれています。動物たちの痕跡(足跡・糞・食べ跡など)探しはアニマルトラッキングとよばれ、これを見つけることで、そこにどんな動物たちが住んでいるかわかります。これから登山にはとてもいい季節です。富士登山の折には、こんな動物たちの痕跡を探ってみるのも面白いかもしれません。
▲哺乳類の垂直分布